血漿糖タンパク質Beta2-グリコプロテインI(B2GPI)のドメインI(DI)は、動脈硬化やがん病変などの局所で起こる病原性血管新生を制御する機能性部位であり、濃度依存的に抗血管新生活性をもつと推定される。我々は、B2GPIのドメイン単位の欠失タンパク質(DI、DV)を大腸菌発現系により発現、精製した。また全長B2GPIとDVのプラスミン処理により、限定分解を受けた(nicked)B2GPIおよび nicked DVを得た。未処理のB2GPIおよびDVと比較しながら、DIの血管新生への作用を確認した。 ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)培養系を用いて上述の(一連の)タンパク質の細胞毒性試験および細胞増殖抑制試験を行った。さらに、皮膚繊維芽細胞とHUVECの共培養により形成される管腔の面積、総延長、分岐数、パス数への影響を血管新生定量ソフトウェアにより画像解析した。DIによる細胞増殖抑制が濃度依存的・時間依存的に観察された。 B2GPIおよびDIへのキレート剤(NOTA)の修飾条件を検討し、B2GPIはリン脂質結合能を維持した状態でNOTA修飾を行うことが可能であった。 膵臓がん細胞(CFPAC-1)を移植したマウスに64Cu標識B2GPIおよびDIを投与し、1-24時間後にPET/CT撮像および摘出した各臓器の放射能濃度を測定することで放射能分布推移を求めた。その結果、B2GPIおよびDIの腫瘍集積放射能(対血液比および筋肉比)はいずれも継時的に増加する傾向にあり、特にDIにおいて投与直後から顕著に高い腫瘍集積性(対血液比)を示した。 また、NOTAを修飾した脂質を組み込んだリポソームにB2GPIを結合し64Cuと反応させることで、Theranostics技術の基盤となる64Cu標識B2GPI結合リポソームを調製することができた。
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