研究課題/領域番号 |
23390152
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
中村 肇 公益財団法人田附興風会, 医学研究所・第8研究部, 部長 (70303914)
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研究分担者 |
糟野 健司 福井大学, 医学部附属病院, 助教 (60455243)
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キーワード | 酸化ストレス / チオレドキシン / レドックス / 慢性腎臓病 / 血液透析 / ヒト末梢血リンパ球 / mRNA / RT-PCR |
研究概要 |
レドックス(酸化還元)制御蛋白チオレドキシン(TRX)の血中濃度は、体内の酸化ストレスを反映する良い指標となることを報告してきた。しかしながら、血中TRXは腎糸球体でろ過され、尿細管で再吸収されることから、慢性腎臓病(CKD)や血液透析(HD)患者では腎機能や透析効率により左右されることが判明した。一方、CKD/HD患者では、酸化ストレスが原因となる心血管イベント合併症が問題となっていることから、腎機能に左右されない新規の酸化ストレスマーカーが求められている。TRXの体内動態を解析する目的で、尿中TRX値を種々の腎疾患患者で測定したところ、尿中TRXは急性腎障害で上昇していた。尿中TRXは人工心肺開始後、早期急性腎障害マーカーである尿中Neutrophil gelatinase-associated lipocalin(NGAL)とほぼ同時に上昇した。また尿中TRXは尿細管障害マーカーである尿中N-acetyl-beta-D-glucosaminidase(NAG)や尿細管の萎縮度と有意な相関を認めた。尿中TRX上昇の基序としては、血中TRXが糸球体ろ過後、尿細管に再吸収され、急性腎障害では尿細管細胞に加わる酸化ストレスにより、尿細管細胞内に蓄えられたTRXが尿中に逸脱すると考えている。さらにCKD/HD患者および健常人の末梢血リンパ球を用いて、酸化ストレスにより増加することが知られているTRXmRNAを測定した。HD患者では、TRXmRNAは透析前に上昇し、透析後に低下することから、透析による酸化ストレスを鋭敏に反映すると考えられる。さらに健常人リンパ球に腎毒性物質を添加培養すると、腎毒性物質の添加によりTRXmRNAが増加することも判明した。新規の酸化ストレスマーカーとして、末梢血リンパ球TRXmRNAの有用性についてさらに検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高速全自動遺伝子解析装置の福井大学への納入が遅れたため、それを用いた研究はやや遅れている。急性腎障害における尿中チオレドキシンの意義について論文投稿段階に到達できた点は評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年1月18日に高速全自動遺伝子解析装置の福井大学への納入が完了し、その後の調整も年度中に完了した。患者検体の収集についてはすでに進行しているため今後は迅速なアッセイ方法を用いることで研究を推進させることが可能であると考えられる。チオレドキシンをはじめとする酸化ストレス関連遺伝子の中で酸化ストレスの定量性・感度・特異度が最も優れた遺伝子をRT-PCRアレイ法を用いてスクリーニングし、対象患者数・対象疾患拡大とマウスや細胞を用いた基礎実験を行うことで、候補遺伝子のRT-PCRと他の酸化ストレスマーカーの優劣について比較検討を行う。
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