研究課題/領域番号 |
23390152
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
中村 肇 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第8研究部, 部長 (70303914)
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研究分担者 |
糟野 健司 福井大学, 医学部, 准教授 (60455243)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 急性腎障害 / 慢性腎臓病 / チオレドキシン / 血液透析 / 末梢血リンパ球 / 過酸化水素 / バイオマーカー |
研究概要 |
近年、慢性腎臓病(CKD)や血液透析の患者では腎死よりも酸化ストレスが原因となる心血管イベントの合併症による死亡率の方が高いことが明らかになり、循環器や脳神経の分野からもCKDへの対応が強く求められている。酸化ストレスのバイオマーカーとしてはいくつかの報告があるが、いずれも酸化生成物、つまり酸化ストレスの結果であり、早期に動くリアルタイムマーカーとは言い難い。そこで本研究では、腎機能や蛋白代謝の影響を受けない新規酸化ストレス測定法を開発している。 昨年度、体内のTRXに腎代謝が及ぼす影響を調べるため、尿中TRXを様々な腎疾患で測定した。急性腎障害(AKI)などの腎疾患によっては尿中TRXが非常に高値となることが分かった。これに基づき尿中TRXがAKIの診断ツールとして有用かどうかROC解析を行った。カットオフ値を35.2 ng/mgとした場合、感度0.9、特異度0.82、AUC0.9でAKIの診断に有用であることが分かった。(平成23年度日本腎臓学会学術総会優秀演題賞受賞、投稿準備中)。今年度はTRXが酸化ストレスを特異的に検出できるか調べるため、各種培養細胞に過酸化水素水、リポポリサッカライド等を添加し反応性を観察した。TRXは過酸化水素水の添加により用量依存性に、培養液上清に増加したが、リポポリサッカライドでは上昇しなかった。細胞内のTRXmRNA量を過酸化水素水の添加後継時的に観察した。過酸化水素水添加12時間後までは細胞内のTRXmRNA量は上昇しなかったが、24時間目には増加した。また正常健康人の末梢血リンパ球に種々の尿毒性物質を加えると用量依存的にTRX mRNAが上昇することを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高速全自動遺伝子解析装置の納入が遅れていたが、H24.1.18にようやく高速全自動遺伝子解析装置の納入が完了し、その後の調整も最近完了した。研究がやや遅れている最大の理由として、本研究課題発案の礎となった「急性腎障害での超早期の尿中TRXの特異的上昇」について論文投稿作業が挙げられる。現在論文投稿を行っているが、海外の査読者から尿中TRXの由来についていくつかの厳しい意見が寄せられた。これらの厳しい意見に対し追加実験をいくつか行っているため本研究がやや遅れている。さらに論文手直しなどの対応に時間が盗られてしまい、当研究の進捗が妨げられている。
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今後の研究の推進方策 |
現在投稿作業中の「急性腎障害での超早期の尿中TRXの特異的上昇」についての論文が受理されれば本研究に労力を集中することが出来るようになり、今後の研究を推進することが出来る。査読者から意見のあった尿中TRXの由来についていくつかの追加実験はほぼ終了しており、今後は論文の手直しを残すのみとなっている。TRXをはじめとする酸化ストレス関連遺伝子の中で酸化ストレスの定量性・感度・特異度が最も優れた遺伝子をRT-PCRアレイ法を用いてスクリーニングし、対象患者数・対象疾患拡大とマウスや細胞を用いた基礎実験を行うことで、候補遺伝子と他の酸化ストレスマーカーの優劣について比較検討を行う。
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