研究課題
レドックス(酸化還元)制御蛋白チオレドキシン(TRX)の血中濃度は、体内の酸化ストレスを反映する良い指標となる。血中TRXは腎糸球体でろ過され、尿細管で再吸収されることから、慢性腎臓病(CKD)や血液透析(HD)患者では腎機能や透析効率により左右される。一方、CKD/HD患者では、酸化ストレスが原因となる心血管イベント合併症が問題であり、腎機能に左右されない新規の酸化ストレスマーカーが求められている。尿中TRX値を種々の腎疾患患者で測定したところ、尿中TRXは急性腎障害で上昇していた。尿中TRXは人工心肺開始後、早期急性腎障害マーカーである尿中Neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL) とほぼ同時に上昇した。また尿中TRX は尿細管障害マーカーである尿中N-acetyl-beta-D-glucosaminidase (NAG)や尿細管の萎縮度と有意な相関を認めた。尿中TRX上昇の機序としては、血中TRXが糸球体ろ過後、尿細管に再吸収され、急性腎障害では尿細管細胞に加わる酸化ストレスにより、尿細管細胞内に蓄えられたTRXが尿中に逸脱すると考えている。尿中TRXがAKIの診断ツールとして有用かどうかROC解析を行った。カットオフ値を35.2 ng/mgとした場合、感度0.9、特異度0.82、AUC0.9でAKIの診断に有用であることが分かった。さらにCKD/HD患者および健常人の末梢血リンパ球を用いて、酸化ストレスにより増加することが知られているTRXmRNAを測定した。HD患者では、TRXmRNAは透析前に上昇し、透析後に低下することから、透析による酸化ストレスを鋭敏に反映すると考えられる。さらに健常人リンパ球に腎毒性物質を添加培養すると、腎毒性物質の添加によりTRXmRNAが増加することも判明した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: 18 ページ: 1263-1272
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