研究課題/領域番号 |
23390161
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
那須 民江 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (10020794)
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研究分担者 |
石井 晃 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30252175)
内藤 久雄 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90547556)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | SHRSP5/Dmcr / コレステロール / 胆汁酸 / 肝線維症 / M30抗原 / 壊死 / エイコサペンタエン酸 / カスパーゼ3/7 |
研究概要 |
高脂肪-高コレステロール(HFC)食にエイコサペンタエン酸(EPA)を添加した餌をSHRSP5/Dmcrラットに摂食させ、肝炎・線維化進展への予防効果とそのメカニズムを、肝機能値、病理(H&E染色,エラスチカワンギーソン染色)、肝臓毒の強い胆汁酸の排泄にかかわる遺伝子発現を解析した。 高脂肪・高コレステロール食は2週間でSHRSP5/Dmcrラット肝臓の脂肪化と炎症を促進させ、8週間では線維化を促進した。このラットにエイコサペンタエン酸(EPA)を投与すると2週目におけるTNFα上昇抑制、8週目のγ-GTPとTNFα/アディポネクチン比の上昇抑制と大脂肪滴を抑制し、炎症を抑える効果があることが示された。このメカニズムとして、EPAはHFC食によるNF-kB(p50/p65)の発現上昇の抑制が明らかにされた。一方HFC食により肝臓毒の胆汁酸合成に関わるCYP7A1の発現が誘導されるが、排泄に関わるBSEPは低下し、胆汁酸の蓄積が予想されたが、EPAはこれらの発現に影響を与えなかった。一方、EPAは線維化進展の指標であるTGFβとαSMAのHFC食による発現誘導を抑制した。しかし、線維化を抑制することはなかった。 HFC食はアポトーシスより壊死細胞数を増加させ、これはミトコンドリア障害とカスペース3/7活性の低下に起因すると解された。また血清のM30抗体が壊死や線維化と高い正の相関関係を示すことが明らかとなった。 肝臓と血清のサイトケラチン18やその断片化産物(M30抗原値)も測定し、壊死や線維化やTUNEL染色の結果や遺伝子群の解析と比較した。血清のM30抗体は壊死と線維化と高い相関性を示すことが判明し、これらのバイオマーカーとして使用できることが明らかとなった。しかし、当初想定されたアポトーシスの発現が低かったため、このバイオマーカーの関連性は明らかに出来なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の達成度は70%であった。その分を繰越して、繰越金により、標準品がなかった胆汁酸の合成を依頼し、肝臓の21種類胆汁酸を測定した。その結果、HFC職摂取により、コール酸/デオキシコール酸比が低下し、この比は血清ALT値、大脂肪滴スコアおよび線維化面積と負の相関関係、即ちケノデオキシコール酸がこれらの指標と正の相関関係を示した。これらの結果は、ケノデオキシコール酸の蓄積がHFC食による肝炎、脂肪化、線維化に関連していることが判明した。一方、殆どの胆汁酸種のグリシン/タウリン抱合比は逆に増えることが判明した。ラットでは通常タウリン抱合体が主要抱合体であるが、HFC食を与えるとグリシン抱合体が主要抱合体となる。ウルソデオキシコール酸はALT,大脂肪滴スコア、線維症と負の相関関係を示し、肝臓毒性を予防すると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
ウルソデオキシコール酸に肝臓の炎症、大脂肪滴沈着および線維症進展予防効果があることがわかったので、HFC食によるこれらの肝障害性がウルソデオキシコール酸投与により、予防されるか、雄のSHRSP5/Dmcrラットを用いて検討する。ウルソデオキシコール酸の量は、臨床で使用されている量から、0.1%と0.3%を使用し、HFC食に混合(企業に委託)して同時に与える。予防効果のメカニズムを解析し、すでに検討してあるEPAの予防効果と比較する。
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