研究課題/領域番号 |
23390165
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
圓藤 吟史 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20160393)
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研究分担者 |
山中 健三 日本大学, 薬学部, 教授 (50182572)
山野 優子 昭和大学, 医学部, 准教授 (30167580)
立川 眞理子 日本大学, 薬学部, 教授 (90139098)
畑 明寿 千葉科学大学, 危機管理学部, 助教 (10433690)
藤谷 登 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (30128673)
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キーワード | 食品 / 食の安全 / リスク評価 / ヒ素 / 海産物 |
研究概要 |
ヒ素の発がんは、無機ヒ素曝露により生体内でジメチルヒ素化合物に代謝され、その活性種、とりわけ、含硫メチルヒ素化合物の活性種がヒ素発がんの究極活性体となり得る可能性が示されるようになってきた。しかし、含硫メチル化ヒ素化合物は、無機ヒ素曝露者のみならず海産物を多食する者でも生体内で産生されることから、多様なヒ素化合物を高濃度に含む海産物を摂取する者の健康リスクが懸念されている。 それら健康リスクを評価するに当たって、化学形態別の曝露指標の確立は欠かせない。そこで、無機ヒ素曝露の生物学的指標を求めた。無機ヒ素曝露者としてバングラデシュ・パブナ地区住民165夫妻を対象とし、ヒ素化合物は高速液体クロマトグラフと誘導結合プラズマ質量分析装置(HPLC-ICP-MS)を用いて測定した。尿中の亜ヒ酸、ヒ酸、モノメチルアルソン酸(MMA)およびジメチルアルシン酸(DMA)量の中央値と(範囲)は、それぞれ16.8(7.7-32.3)、1.8(<0.5-3.3)、13.7(5.6-25.0)および88.6(47.9-153.4)μgAs/Lであり、それらは互いに有意な相関を示したうえ、尿中の無機ヒ素とMMAの和が飲料水中ヒ素濃度と最も良い相関を示した。また、アルセノベタイン、アルセノコリンは検出されなかった。この結果より、尿中の無機ヒ素とMMAの和が海産物摂取の有無にかかわらず無機ヒ素曝露の生物学的指標として有用であることが明らかになった。 次に、HPLC-ICP-MS法は高価であることから、より廉価で汎用性の高いガス・クロマトグラフを直結した質量分析計(GC-MS)を用いた分析法の開発を進めている。 さらに、含硫メチル化ヒ素化合物の代謝活性化ならびに毒性発現機序をさらに明らかにするため、微生物を用いた復帰突然変異原性試験等を実施するとともに、毒性発現に係る代謝物の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尿中の無機ヒ素とMMAの和が無機ヒ素曝露の生物学的指標として有用であることを明らかにした成果は、広く活用されるものと思われる。GC-MS法は、廉価で汎用性が高い。含硫メチル化ヒ素化合物の代謝活性化と毒性発現機序が次第に明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
無機ヒ素曝露者と海産物摂取者とで尿中ヒ素化合物の分布の異同について検討する。尿中ヒ素化合物のGC-MS法による分析法を開発する。含硫メチルヒ素化合物の合成について検討する。含硫メチルヒ素化合物の代謝について、培養細胞、腸内細菌を用いHPLC-ICP-MSで代謝物を測定する。In vitro実験の成果を踏まえ、ボランティアを募集し特定海産食品摂取により含硫メチルヒ素化合物の生成過程を明らかにする。以上の結果から、食品摂取によるヒ素化合物の体内動態を明らかにし、発癌を含めた毒性発現のリスク評価を行う。
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