研究課題/領域番号 |
23390165
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
圓藤 吟史 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20160393)
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研究分担者 |
山中 健三 日本大学, 薬学部, 教授 (50182572)
山野 優子 昭和大学, 医学部, 准教授 (30167580)
立川 眞理子 日本大学, 薬学部, 教授 (90139098)
畑 明寿 千葉科学大学, 危機管理学部, 助教 (10433690)
藤谷 登 千葉科学大学, 危機管理学部, 教授 (30128673)
竹内 靖人 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20631360)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 食品 / 食の安全 / リスク評価 / ヒ素 / 海産物 |
研究概要 |
ヒ素の発がんは、無機ヒ素曝露により生体内でジメチルヒ素化合物に代謝され、その活性種、とりわけ、含硫メチルヒ素化合物の活性種がヒ素発がんの究極活性体となり得る可能性が示されるようになってきた。しかし、含硫メチル化ヒ素化合物は、無機ヒ素曝露者のみならず海産物を多食する者でも生体内で産生されることから、多様なヒ素化合物を高濃度に含む海産物を摂取する者の健康リスクが懸念されている。それら健康リスクを評価するに当たって、含硫メチル化ヒ素化合物を合成し、代謝、作用機序を明らかにするとともに、化学形態別の曝露指標の確立は欠かせない。 バングラデシュのヒ素汚染地域に住む165夫妻からの尿について、高速液体クロマトグラフと誘導結合プラズマ質量分析装置(HPLC-ICP-MS)を用いて化学形態別ヒ素分析を行った。その結果は無機ヒ素曝露と生物学的指標との関連を明らかにするものであり、特に尿中の無機ヒ素とモノメチルアルソン酸(MMA)の和は、無機ヒ素曝露の生物学的指標として最も優れていた。(Hata et al. 2012) 次に、HPLC-ICP-MS法は高価であることから、ガスクロマトグラフ-質量分析計(GC-MS)を用いた尿中ヒ素化合物の新しい化学形態別分析法を開発した。この方法は従来法に比べて、廉価で汎用性が高いため、広く普及されるものと思われる。(Takeuchi et al. 2012) 含硫メチル化ヒ素化合物のin vitro代謝実験を行い、HPLC-ICP-MS、HPLC-TOF-MS、GC-MSなどの高感度分析装置を用いて検討を行った結果、毒性の強い代謝物の生成が推定された。 アルセノ糖は、含硫メチル化ヒ素化合物に代謝されることから、海産物を多食する者の尿を用いて、リスク評価を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
無機ヒ素曝露の生物学的指標として尿中の無機ヒ素とMMAの和が最も優れていることを計画どおり明らかにした。当初想定していなかった新しい化学形態別分析法が開発された。アルセノシュガー類の代謝物である含硫メチル化ヒ素化合物の毒性の解明は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
含硫メチル化ヒ素代謝物の代謝については、培養細胞、腸内細菌を用いたin vitro実験を行い、HPLC-ICP-MS法およびHPLC-TOF-MS法を駆使し、代謝物を測定する。また生成機序についても検討する。含硫メチル化ヒ素代謝物は特定の海産食品を多食した者の尿に検出されると考えられるので、ボランティアを募り、尿中へ排泄されるヒ素化合物の化学形態と量の経時変化を追跡する。以上の結果から、食品摂取によるヒ素の発がんを含めた毒性発現リスクの低減法を提案する。
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