研究課題/領域番号 |
23390167
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研究機関 | 独立行政法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
平野 靖史郎 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (20150162)
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研究分担者 |
小林 弥生 独立行政法人国立環境研究所, 環境健康研究センター, 主任研究員 (00391102)
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キーワード | ヒ素 / 結合タンパク質 / 担体 / 細胞 |
研究概要 |
ヒ素による井戸水・大気の汚染は、中国、インドやバングラディッシュなどの途上国で大きな環境問題となっており、世界で数千万人もの慢性ヒ素中毒疾患者がいると報告されている。3価のヒ素化合物は5価に比べて毒性が高いこと、有機ヒ素化合物の毒性は価数の違いにより、無機ヒ素の場合よりさらに大きく変化することなどが指摘されている。本研究では、ヒ素反応性タンパク質を包括的に調べ、そのキャラクタラリゼイーションを行うことにより、生体内におけるヒ素の標的分子と反応機構を明らかにすることにより、環境汚染物質であり、また前骨髄性白血病の治療薬としても実際用いられているヒ素化合物と、生体分子との反応性を直接調べることにより、環境毒性学と臨床応用の両面に資することを目的としている。まず、ヒ素化合物であるアニサリル酸をチオール化合物を用いて5価から3価へ還元し、さらにスペーサーを介してセファロースに固定化した。固定化されたヒ素を、プラズマ質量分析計を用いて測定し、結合したヒ素の含量測定を行った。HepG2細胞の細胞可溶性画分のタンパク質を用いて、担体に結合したヒ素とのアフィニティーを調べるとともに、グルタチオンやジチオスレイトールを用いて結合タンパク質の溶出条件を検討し、ヒ素結合タンパク質の溶出条件の検討を行った。ヒ素は代謝過程において、ヒ素メチル化酵素(AS3MT)と結合するものと考えられるが、AS3MT導入細胞を用いて細胞内のヒ素の動態について調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、ヒ素結合タンパク質を分離するための担体を作製することにあったが、アニサリル酸を用いて計画通りヒ素をつけた担体の作製に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
配列状近傍に複数のシステインを含むタンパク質の中でも、RING構造を持っており亜ヒ酸の処置で治癒率が高い急性前骨髄性白血病の原因物質とも考えられているタンパク質であるPMLにも注目して、本タンパク質を過剰発現させた細胞を作製し、ヒ素を曝露した細胞におけるPMLタンパク質へのヒ素の結合、ならびにヒ素を結合したPMLタンパク質の細胞内動態について調べる。
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