研究課題
基盤研究(B)
本年度は、対象となる 7歳 (生後 84ヶ月)児童の血圧値の分布ならびにその規定因子を分析した。解析には、TSCD (Tohoku Study of Child Development)で 84ヶ月調査を実施し、本解析に用いた基礎特性値の揃っている 380名の児とその母親のデータを用いた (女児 47.4%、平均の出生時体重 3073.2g、出生時身長 49.1cm、84ヶ月調査時の BMI 15.9kg/m2)。児の調査時血圧値は 91.6/55.6mmHg、家庭血圧値は 93.7/55.7mmHgであり、母の調査時血圧値は 109.5/70.2mmHg、家庭血圧値は 109.2/68.0mmHgであった。母親の家庭血圧が 125/80mmHg以上である群を高値群、125/80mmHg未満である群を正常群と定義したところ、正常群に比較して、高値群では児の調査時 BMIが有意に高値であったが、その他の児の基礎特性に 2群間で統計学的な有意差は認められなかった。母親においては、調査時年齢と現在の飲酒者の割合が高値群で高い値を示す傾向が認められ、また高血圧家族歴を有する割合が有意に高率であった。児の BMIをはじめ、血圧に影響を及ぼすと考えられる項目 (粗比較で境界有意を示した項目を含む)で補正した各群の児の血圧値は、調査時血圧に群間差を認めなかったが、家庭拡張期血圧および脈拍について、母の家庭血圧高値群で有意に高値を示した。児の性別ごとに分析した場合、男児においては家庭脈拍が正常群 (82.0±7.8bpm)に比較して高値群 (86.9±6.9bpm)で有意に高値を示した。しかし、女児においては有意差を認めず、母の家庭血圧正常/高値の 2群と児の性別との間の交互作用も有意ではなかった (P≧0.1)。
2: おおむね順調に進展している
TSCDコホートの 7歳児調査について、血圧と主項目についてデータベース化が完了し、早期の原著論文の公表を実現することができた。国際的な研究会での発表を行い、各国の研究者との活発な情報交換を実現した。
本研究データの解析に際し、主任研究者らのグループと緊密な共同研究を行っているベルギー・Leuven大学の高血圧研究センターと連携し、周産期からの循環器疾患リスクに対する最新の研究手法の導入を図る。特に、欠損値を統計学的方法で補完し、限られた情報を最大限有効に活用する形で、有用な知見の探索を行いたい。TSCDの 7歳児調査を、東北地方沿岸地域においても滞りなく実施し、より精度の高いデータベースと解析結果の積極的な社会的発信を行いたい。
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