研究課題
本年度は、母親に対する自記式アンケートから得た授乳期間の情報に基づいて、授乳期間が7歳児血圧に及ぼす影響を分析した。対象は、TSCD (Tohoku Study of Child Development)コホートの仙台地区のうち、基礎特性情報の揃った 375名の 7歳児ならびのその母親である。母乳を主栄養源とした期間で対象者の均等 2分割を行ったところ (中央値 8ヶ月)、母乳を主栄養源とした期間が 8ヶ月以上であった群 (長期群) に対して、母乳を主栄養源とした期間が 8ヶ月未満であった群 (短期群)は、出生体重が有意に低値であった (3109±339 vs. 3036±332, P=0.04)。児の 7歳時点の血圧値については、調査時血圧は 2群間に有意差を認めなかったが、児の家庭血圧は短期群で 94.7/56.4mmHg、長期群で 93.0/55.1mmHgとなり、長期群において収縮期・拡張期ともに有意に低値であった (P=0.007/0.04)。母乳を主栄養源とする期間の他に、児の 7歳時血圧に影響する因子を重回帰分析で評価したところ、調査時血圧には児の 7歳時 BMIが強い影響力を有し、母乳を主栄養源とした期間は、収縮期血圧、拡張期血圧ともに有意な関連を認めなかった。一方、母乳を主栄養源とした期間は、児の家庭収縮期血圧と有意な負の関連を示し、拡張期血圧とも、負の関連のある傾向を示した。ただし、児の 7歳時 BMIは 児の家庭血圧に最も強く関連していた。重回帰モデルの当てはまりを示す R二乗値を比較したところ、随時血圧が収縮期血圧/拡張期血圧=0.07/0.04、家庭血圧が同 0.25/0.12であり、家庭血圧を予測するモデルの当てはまりが良好であった。
2: おおむね順調に進展している
本研究で収集したデータは良好に精査・整理され、解析に供されている。国内外の研究者との情報交換を精力的に実施し、国際的な学術学会での発表も順調に行うことができた。TSCDコホートの地域調査において、脈波伝播速度の測定を行うことができなかった。
TSCDコホートの仙台地区と沿岸のデータを連結し、より厳密な周産期からの循環器疾患リスクの同定と定量化を図りたい。大迫研究コホートでの小児家庭血圧データの分析を進めたい。主任研究者が共同研究を行っているベルギー・Leuven大学の高血圧研究センターが有する地域一般住民コホートにおいて、家庭血圧 (自己測定ではなく、調査者が各家庭を訪問して測定する血圧)と周産期から成育過程の情報を統合し、家庭血圧など循環器疾患リスクに影響を与える未知の因子を探索する。また、これまでに本研究から明らかになった母乳栄養の影響などに関する外的妥当性を検討したい。
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