研究課題
本年度、TSCD (Tohoku Study of Child Development)では妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension; PIH)の既往と出産7年後の母児の家庭血圧との関連を分析した。対象は、TSCDの仙台ならびに沿岸地域の登録母児のうち、児の7歳調査時点で、母児ともに朝晩の家庭血圧を3日以上測定した809組の母児 (母平均37.9歳、児平均月齢84.7ヶ月、男児52.2 %) である。母親の妊娠中の血圧および尿蛋白の情報は周産期のカルテから取得し、妊娠高血圧症候群管理ガイドライン2009に基づいてPIHを定義した上で、母親がPIHであった対象母児をPIH群、正常妊娠であった対象母児を正常群と分類し、母児の血圧値を比較した。対象の母親のうちPIH既往は 35名 (4.3%)であった。7歳調査時の母親は両群とも同年齢であったが (PIH群 vs. 正常群: 37.3 vs. 37.9歳, P=0.4)、body mass indexはPIH群が有意に高値を示した (23.8 vs. 21.3, P=0.004)。児の家庭血圧値は、PIH群と正常群との間に有意差を認めなかった (P=0.6)。一方、母の家庭血圧値は、交絡因子で補正した後も PIH群で有意に高値であった (P<0.0001)。正常群に対する、PIH群の母の家庭高血圧(家庭血圧 135/85 mmHg以上)有病オッズ比は 4.7倍 (95%信頼区間: 1.6~13.6倍)であった。調査時随時血圧に関しても、母児ともに家庭血圧と同様の結果であった。以上から、母のPIH既往は、児の7歳時点の家庭血圧値に影響を及ぼさなかったものの、PIH既往は出産7年後の母自身について家庭高血圧の強いリスクであり、PIH既往女性における、若年からの家庭血圧測定や健康管理の重要性が本研究から示唆された。
2: おおむね順調に進展している
TSCDコホートの仙台地区と沿岸地域のデータを連結し、コホート効果を考慮した解析を実施することができた。昨年度に引き続き、国内外の研究者との情報交換を精力的に実施し、国際的な学術学会での発表も順調に行うことができた。主成果の原著論文での公表が本年度に間に合わなかった。
主任研究者が共同研究を行っているベルギー・Leuven大学の高血圧研究センターで収集を開始した心電計同期型の動脈硬化因子測定値の有用性を実証し、TSCDコホートならびに大迫コホートに応用する。コホート単独でなく、他施設のデータを合わせた統合解析を実施する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Hypertension
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