研究課題
「ストレス老化」という新しい概念の提起とともに、「癌化とはストレス老化という生体バリアーの破壊・回避の結果である」という仮説が生まれつつある。我々は、長寿遺伝子として解糖系酵素ホスホグリセリン酸ムターゼPGMの単離を端緒に、「癌でのストレス老化シグナルの減弱は、解糖系亢進(ワールブルグ効果)が原因ではないか」という仮説の着想に辿り着き、その検証を培養細胞、および個体(マウス)レベルで証明することを目標として本計画をスタートした。まず培養細胞においては、ストレスにより、PGMタンパクが減少しユビキチン化を受けることを確認し、その分子機序として、Pak1キナーゼやユビキチンリガーゼによる分解を確認した。興味深いことに、PGMのリン酸化状態が、タンパク間結合効率に大きく影響し、ユビキチン化効率を決定していることも判明した。上記の結果は、培養細胞老化での解糖系代謝のユビキチン化制御による新規分子機構の発見であり、最大の成果と言える。次年度以降に、論文としてまとめて、発表を目指す。次に、個体レベルでは、全身発現型PGMトランスジェニックマウス(PGM-TGマウス)の確立を目指した。PGM-TGマウスのF1、F2以降のファンダーに対して、ゲノムDNA-PCR法、ウェスターンブロット法の両者により、ほぼ全組織・内臓でのPGM強発現を確認した。これらマウスにおける病理組織検討、ストレスモデル、負荷試験モデルなどの実験を現在進行中である。培養細胞で観察したように、PGM発現による抗酸化ストレス効果・長寿効果がマウスモデルでも観察できるかどうか、興味の対象となる。
2: おおむね順調に進展している
上述のように、平成23年度の最大の成果として、PGMユビキチン化分子機構の解明に成功し、その論文準備段階に入っており、計画当初目的に沿う形で、順調である。マウスモデルに関しては、PGM-TGマウスが完成したばかりであり、その解析を急ぐ必要がある。
PGMのユビキチン化分子機構の解明により、創薬など臨床応用の可能性も出てきた。PGMがどのような加齢性疾患と関連するかの解明が今後重要であり、その鍵を握るのが、マウスモデルである。上述のPGM-TGマウスや他のモデルマウスを駆使して、早期に、その関連疾患を絞込み、その臨床応用への道筋確立を目指したいと思う。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) 図書 (1件)
COPD
巻: 9 ページ: 1-8
Journal of Clinical Gerontology & Geriatrics
巻: 3 ページ: 21-24
Journal of Aging Research
巻: 3 ページ: 1-11
日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌
巻: 15 ページ: 4
医学の歩み
巻: 239 ページ: 337-342
新薬と臨床
巻: 60 ページ: 13,751,381