研究課題
①サルコペニック肥満の定義:これまで蓄積された約1000例を対象として、昨年度の大腿CTによる評価に引き続き、バイオインピーダンス法による筋肉率・筋肉量、握力指標の-1SDおよび-2SDからサルコペニアを定義し、臍部CTによる内臓脂肪面積100cm2以上、BMI25以上と定義した肥満と組み合わせからサルコペニック肥満を定義した。大腿CT評価と同様いずれの指標においてもサルコペニック肥満は高齢者の一般的な肥満形態であることを再確認した。②老化関連要因との検討:サルコペニック肥満と老化関連因子、機能障害、臓器障害との関連性の検討を進めた。男性においてサルコペニック肥満はbaPWVと有意に相関することを認め論文報告したが(Int J Cardiol 2012)、筋肉率、握力指標で定義したサルコペニック肥満では、同様の関係が女性にも認められており、中心血圧の上昇と合わせて、論文化中である。さらに、呼吸機能、認知機能がサルコペニアと関連することを見出し、論文化を進めている。③病因の検索:サイトカイン測定を進めた。3方法の定義によるサルコペニック肥満との関連性の検討を進める。④身体計測値等による筋肉量推定の構築:ヒップ、ウエストを加えることで大腿筋横断面積の近似値が改善することを見出した。論文化を進めている。⑤マウスのサルコペニアモデルの開発に成功した。糖尿病を母体としたマウスモデルに、慢性炎症を加えることにより、筋内脂肪浸潤、筋委縮を呈するモデルの開発に成功した。より詳細なメカニズムの解明を進める。⑥縦断研究::アンケートを実施し、転倒、骨折、心血管病の新たな発症、要介護状態への移行と要介護度、死亡の発生の調査を進めている。
2: おおむね順調に進展している
(理由)2年間の研究により一定の成果は得られた。特に、データ収集や解析、動物モデルの開発などは、期待以上の成果が得られたと考えられる。一方、これらの重要な知見の論文化が追い付いておらず、論文化を急ぐ必要がある。またサルコペニック肥満に関するreview articleの依頼が欧文誌(Endocrine)よりあり現在執筆中である。
最終年度であり、これまでの研究を継続しながら、総括的なまとめを行う。①3方法によるサルコペニック肥満の基準値を提唱し、②身体計測値を用いた検診への応用を提唱する。③個々の老化関連要因との関係のみではなく、総合的な老化指標してフレイルティ・スコアの算出を試み、サルコペニアと老化との関連性の検討を進める。④500例を超えサイトカインの計測値が得られている。集計の上サルコペニア、サルコペニック肥満との関連性を明らかにする。また、候補遺伝子的アプローチによる遺伝的要因に関する検討を行う。⑤開発したサルコペニアマウスモデルの研究を進め、インスリン抵抗性とサルコペニアを結びつけるメカニズムを明らかにする。薬剤の効果を検討し、サルコペニア治療法の開発を試みる。⑥アンケート結果を集積し、骨折、要介護状態などをエンドポイントとして、①で定義したサルコペニア、サルコペニック肥満の検証を行う。
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