研究実績の概要 |
ストレス性体温上昇反応(stress-induced hyperthermia, SIH)に関与する脳内部位を明らかにするために、ラットを用いてSIH時に活性化する脳領域を調べた。 具体的には、雄ウイスターラットを以下の四群に分けて腹腔内温を観察し、またストレス負荷終了30分後の脳切片を作成しFos(神経活動のマーカー)染色を行なった。(1) ジアゼパム (4 mg/kg, i.p.)投与1時間後にsocial defeat stress (SDS)(1時間)を加える。(2) vehicle投与1時間後にSDSを加える。(3) ジアゼパム投与1時間後にsham stress(ラットを持ち上げ、自分のケージに戻す)を加える。(4) vehicle投与1時間後にsham stressを加える。 ウイスターラットの体温はSDS後、約2℃上昇したが、ジアゼパムの前処置によって有意に抑制された。Fosの発現がストレスによって増加し、ジアゼパムによって抑制された脳領域は大脳皮質(前頭前野、感覚および運動皮質)、中隔核、内側扁桃核、視床下部(内側および外側視索前野、室傍核小細胞性領域、背内側核、脳弓周囲核、結節乳頭核)、視床(連合核、正中核群、髄板内核)、内側および背側縫線核、淡蒼縫線核(VGLUT3陽性ニューロン)などであった。その一方で、リポポリサッカリド発熱時にFosの発現が増加する腹内側視索前野、終板器官、扁桃体中心核にはSDS後にFosは増加しなかった。 この結果をもとに、研究代表者は、これまで関与が知られていなかった結節乳頭核のヒスタミン神経系がSIHに関与しているのではないかと考え、ヒスタミン受容体アンタゴニストをラットに前投与したところ、SIHが抑制されることを見いだした。
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