研究課題/領域番号 |
23390190
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
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研究分担者 |
加野 浩一郎 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (80271039)
野呂 知加子 日本大学, 生産工学部, 准教授 (80311356)
石毛 美夏 日本大学, 医学部, 助教 (90420950)
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キーワード | 再生医学 / 移植・再生医療 / 脂肪細胞 / 脱分化脂肪細胞 / 血管新生 |
研究概要 |
(1)大動物を用いた細胞治療の前臨床試験 ・ウサギ下肢虚血モデルに対する治療効果の検討 日本白色家兎の大腿動脈を結紮・切除し、下肢虚血モデルを作成。自家DFATを虚血部位に筋注し(DFAT群)、生理食塩水を筋注した群(Control群)と血流改善の程度を比較検討した。その結果、Control群に比べDFTA群では、移植1週後より有意に血流が改善し、移植4週間後には虚血部位における血管密度の増加が認められた。 ・ウサギ骨欠損モデルに対する治療効果の検討 日本白色家兎の両側頸骨欠損を作成後、自家DFAT・人工骨基質複合体(DFAT肢)または人工骨基質のみ(Control肢)を欠損部に移植した。移植4週間後に頸骨を摘出し、骨強度の測定、マイクロCTによる骨密度の定量など行い、DFAT移植の効果を検討した。その結果、Control肢に比べDFAT肢では、有意に骨強度・骨密度の増加と皮質骨の再生が認められた。 ・ウサギ骨粗鬆症モデルの作製 雌性日本白色家兎の両側卵巣摘出を行い、X線学的に骨密度の変化を経時的に測定した。その結果、6ヶ月以後に大腿骨の骨密度低下が再現性よく認められ、骨粗鬆症モデルを確立するに至った。 ・ブタ下肢虚血モデルに対する治療効果の検討 ブタの両下肢大腿動脈を5cm長にわたり結紮切除し、虚血肢の経皮酸素分圧を経時的に計測した結果、4週間以上持続する下肢虚血モデルの作成に成功した。 (2)高齢者難治性疾患に対するDFAT細胞治療の有効性の検討 ・椎間板変性症に対する効果 ウサギ椎間板より単離培養した髄核細胞とウサギDFATとの共培養を行い、髄核細胞の増殖活性や細胞外基質産生能の変化を評価した。その結果、DFATと共培養した髄核細胞は、共培養しない髄核細胞に比べ、増殖活性が有意に高くなることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画にある「(1)大動物を用いた細胞治療の前臨床試験」では、ウサギ下肢虚血モデルおよびウサギ骨欠損モデルに対するDFAT自家移植の有効性を確認し、ウサギ骨粗鬆症モデルの確立に成功した。また次年度実施予定だったブタの下肢虚血モデルの作成も実施することができた。「(2)高齢者難治性疾患に対するDFAT細胞治療の有効性の検討」では、ウサギ髄核細胞とDFATの共培養実験を実施した。これらの進捗状況より、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討において、ウサギを用いた下肢虚血モデルは再現性の高い均質なモデルが得られる一方、ブタの下肢虚血モデルは個体差が大きく、群間比較が困難であることが明らかになった。このため今後、群間比較が必要な実験はウサギのモデルを用い、ブタのモデルは主にDFAT移植の移植安全性を評価する実験に使用したいと考えている。またDFATを難治性PADに対して臨床応用するにあたり、現在臨床試験が行われている末梢血単核球移植などとの効果比較や、至適移植細胞数、複数回移植による効果などを評価することが必要となる。次年度以後は、このような他細胞との比較実験や、至適移植条件を明らかにする実験をウサギ下肢虚血モデルを用いて検討していく。
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