研究課題/領域番号 |
23390190
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
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研究分担者 |
加野 浩一郎 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (80271039)
野呂 知加子 日本大学, 生産工学部, 教授 (80311356)
石毛 美夏 日本大学, 医学部, 助教 (90420950)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医学 / 移植・再生医療 / 脂肪細胞 / 脱分化脂肪細胞 / 血管新生 |
研究概要 |
1. 大動物を用いた細胞治療の前臨床試験 ・ウサギ下肢虚血モデルに対する治療効果の検討:ウサギ下肢虚血モデルを作成し、1週間後に自家DFAT(DFAT群)、末梢血単核球(PBMNC群)、線維芽細胞(fibroblast群)、または生理食塩水(Control群)を虚血部位に筋注し、血流改善の程度を比較検討した。その結果、DFAT群は、Control群と比較して移植後1-3週目において有意な血流増加を認めた。またFibroblast群に対しても移植後1, 2週目において有意な血流増加を認めた。DFAT群とPB-MNC群では、観察期間中に有意な差は認められなかった。以上の結果より、DFATは線維芽細胞に比べて高い血管新生能を有することが明らかになった。 2.高齢者難治性疾患に対するDFAT細胞治療の有効性の検討 ・椎間板変性症に対する効果:ウサギ脊椎椎間板より採取培養した髄核(NP)細胞とウサギDFATのトランスウェルを介した共培養を行い、それぞれの細胞の形質変化を評価した。その結果、培養後のNPの細胞数は単層培養(C)群と比較して間接的共培養(IC)群および直接的共培養(DC)群で有意に増加していた。遺伝子発現解析ではDFATはC群に比べIC群およびDC群で各種髄核細胞マーカー遺伝子の発現量が有意に増加していた。上記結果より、NP細胞とDFATの共培養により、NP細胞の細胞増殖能が高まり、一方、DFATはNP様細胞へ分化する可能性が示唆された。 ・腹圧性尿失禁に対する効果:ラットに膣拡張術(VD)と両側卵巣摘出(OVX)を行い、持続的腹圧性尿失禁モデルの作成を試みた。その結果、VDと両側OVXを併用することにより、傷害2週間後から6週間以上の長期にわたっては排尿機能障害が持続する新しいラット腹圧性尿失禁モデルの作出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「ウサギ骨粗鬆症に対する治療効果の検討」では、両側卵巣摘出(OVX)にて骨粗鬆症の誘導を試みたが、骨密度の低下は非常に緩除であり、大腿骨骨密度が有意に低下するまでに7ヶ月以上かかることが明らかになった。このため、本年度は骨粗鬆症を誘導するにとどまり、DFAT移植実験は次年度に繰り越すことにした。他の研究課題「ウサギ下肢虚血モデルに対する治療効果の検討」や「椎間板変性症に対するDFAT移植の効果」については順調に研究が進み、DFATの治療効果が明らかになった。これらの進捗状況により、おおむね順調に経過していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「大動物を用いた細胞治療の前臨床試験」では、ウサギ下肢虚血モデルを用いた細胞移植実験にて、DFATの血流増加作用が線維芽細胞より優れていることが明らかとなった。末梢血単核球に比べてもDFATの効果が高い傾向にあったが、統計学的に有意差は認められなかった。今後、検討数を増やすとともに、投与回数を増やすなど移植条件を変更してDFATの優位性を明らかにしていく。また同時にブタ下肢虚血モデルに移行し、自家DFAT移植の安全性と妥当性を評価する。 「椎間板変性症に対するDFAT移植の効果」では、髄核細胞とDFATの共培養により、DFATが髄核細胞様の形質を獲得することが明らかとなった。次年度は、ラットに椎間板変性を機械的に誘導し、DFATを局所移植し、その治療効果を判定する。またDFATからiPS細胞への誘導実験にも着手する予定である。
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