研究概要 |
アレキシサイミア(失感情症)とは,心身症において,自己の情動の同定や表現の困難を主徴とする,情動処理の障害に関わる重要な病態生理である。今回の研究では,その中心テーマである,自己の身体―情動状態の変化とその認知を,機能的磁気共鳴画像 を用いて,その脳内の神経経路・ネットワークを構成するそれぞれの脳部位の局所の脳活動,及び脳内の複数の部位間の機能連絡について明らかにすることを目標としている。自己意識の4つの要素のうち、本年度は後半二つの③self-affectivity: 自己の情動の体験 ④self-history: 自伝的記憶に立脚した自己継続感 のfMRIの課題の開発に着手した。③については、徐々に変化する顔表情に対するaffectivityの課題を作成し、fMRIによって脳活動を撮像した。また、④については、webを用いて日常の出来事を記録するシステムを開発した上で、自伝的記憶の想起に関するfMRI課題を作成し、その想起時の脳活動を測定した。さらに、メタ認知の神経ネットワークの描出を目的として、情動刺激の際に起こる自己の内面の情動変化を,第3者的に俯瞰的に観察した時(メタ認知)の脳活動を測定した。また、自己意識・メタ認知関連のfMRIによる脳活動測定と同時に,時間により変化する自律神経系の生理指標として,皮膚電気抵抗(GSR),心拍変動(Heart rate variability; HRV)を測定するシステムを確立した。また、前年度より引き続いて、②Self-coherenceに関する課題として,ゴムの手の錯覚課題をfMRI中に行うための実験パラダイムをもう一度再考し、予期不安などのトップダウンコントロールが錯覚学習に影響する神経機序を見るために、古典的条件付け課題を導入し、fMRI用の課題構築、さらに被験者のタイピングなどを行い、本実験の準備が整った。
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