研究課題/領域番号 |
23390196
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸澤 宏之 京都大学, 医学研究科, 講師 (80324630)
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キーワード | 肝癌 / 肝前駆細胞 / 遺伝子変異 / AID |
研究概要 |
癌の発生には、種々の発癌関連遺伝子に変異や欠失などの遺伝子異常が生成・蓄積することがきわめて重要な役割を果たしていることが知られているが、その生成機序に関しては大部分が不明のままであった。Activation-induced cytidine deaminase(AID)はこれらの遺伝子編集酵素群の中で唯一、ヒト自身の遺伝子(DNA)配列に変異を導入する活性を有することが示されている分子である。申請者らのこれまでの解析結果から、肝癌をはじめとするさまざまなヒト消化器癌の発生過程において、感染や炎症反応により上皮系細胞に異所性にAIDが発現誘導されること、その結果、遺伝子変異が生成・蓄積し、腫瘍発生に重要な役割を果たしていること、が明らかとなってきた。 しかしながら、肝癌の発生が肝組織の幹細胞や前駆細胞を起源としているのか、どのような遺伝子異常を獲得することにより腫瘍化にいたるのか、については不明のままであった。 そこで、肝前駆細胞移植モデルを用いて、まずGFPトランスジェニック・マウスの胎仔肝組織から採取した肝前駆細胞の移植を行った。レシピエントマウスへのGFP発現した移植細胞の生着率を経時的に検討することにより、肝前駆細胞のレシピエント肝への生着がもっとも高率に達成できる肝障害の誘導レベルの至適条件を設定した。次に、AID-Tgマウスの胎仔肝組織から肝前駆細胞を分離し、レシピエントマウスへの経脾的移植を行い、肝障害誘導を行ったところ、生着した移植細胞はレシピエントマウス肝組織において肝腫瘍を発生させることが明らかになった。また、全エクソン領域の塩に配列を次世代シーケンサーにより同定し、腫瘍細胞と移植した肝前駆細胞で比較することにより、腫瘍化に際して肝前駆細胞が獲得したゲノム変化の全体像が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝前駆細胞の移植実験は順調に進行している。同時に並行して進めているEpCAM-Cre遺伝子改変マウスの作成作業については現在、コンストラクトを作成中であり、本年度内のマウス樹立を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
EpCAM-Creマウスは当初の計画予定ではノックインマウスとして作成する予定であったが、CreのノックインによりEpCAM遺伝子に隣接して存在するミスマッチ修復遺伝子に悪影響が生じることが作業を進める上で判明した。このため、EpCAMプロモーター配列をBACとして取得したのちにCre配列を融合させてトランスジェニックマウスとして作成する、という方針で作業を継続している。
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