研究課題/領域番号 |
23390197
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹原 徹郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70335355)
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研究分担者 |
巽 智秀 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20397699)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | オートファジー / アポトーシス / 脂肪肝炎 / 肝細胞癌 / Atg7 / Mcl-1 / ノックアウトマウス |
研究概要 |
オートファジーは細胞内蛋白やオルガネラの分解システムであり、細胞の生存や死に直結した生命現象である。しかし、肝癌におけるオートファジーの実態とその意義については十分に理解されていない。本研究課題では、肝細胞癌の発生と進展におけるオートファジーの意義とその制御機構を基礎的かつ臨床的に明らかにすることを目的に研究を行う。昨年度、ヒト肝細胞癌組織の一部ではオートファジーが亢進していること、肝癌細胞株はソラフェニブ投与によりオートファジーが誘導され、それにより細胞死が抑制され治療抵抗性に関与していることを明らかにした。本年度は高脂肪食負荷によるマウスの発癌機構を検討するため、高脂肪食負荷3ヵ月後のオートファジーについて検討した。肝臓は著明な脂肪肝炎像を呈し、オートファジーが抑制されていることがp62の蓄積と電子顕微鏡により示された。肝細胞におけるオートファジー抑制するため、肝細胞特異的なAtg7ノックアウトマウスを作成したところ、著明な肝腫大と肝障害を発現したことから、高脂肪食負荷による脂肪肝炎の病態ではオートファジーが抑制され、このことが肝障害の出現に関与していることが示唆された。持続的な肝障害を呈する肝細胞特異的Mcl-1ノックアウトマウスが自然発癌することから、オートファジーの抑制がアポトーシスを誘導し発癌に繋がる可能性が考えられた。昨年度の知見と総合して考察すると、肝臓におけるオートファジーに関して、正常細胞におけるオートファジーの抑制が発癌を誘導し、癌細胞におけるオートファジーの亢進が癌を進展するという二面性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マウスの脂肪肝炎モデルにおけるオートファジー抑制が明瞭に示され、細胞死との関連を解析することが可能となった。肝細胞特異的Atg7ノックアウトマウスを独自に作成し、アポトーシス誘導との関連を解析する基盤を構築した。
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今後の研究の推進方策 |
オートファジーの癌の発生・進展における二面性について詳細に解析する必要がある。オートファジーとアポトーシスの関連を培養細胞、動物モデルで解析し、肝疾患病態形成における意義を解明する必要がある。
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