研究課題
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は肝発癌の背景肝として知られている。しかし、NASH発症及び肝発癌のメカニズムは明らかではない。そこで、NASHにおける病態解び発癌機構の解明を目的とし、脂肪酸投与による肝細胞オートファジー及びアポトーシスへの影響ならびに肝発癌への影響を検討した。ヒト肝癌細胞株やマウス肝細胞株にパルミチン酸(PA)を投与すると、LC3-II及びP62蛋白の蓄積を認め、PAはオートファジー後期段階を抑制した。オートファゴソームとライソゾームの融合を負に制御するRubicon蛋白は、PA投与に伴い増加した。またPA投与によりIRE1-JNK及びPERK-CHOP経路を含む小胞体(ER)ストレス蛋白の活性化を伴ってCaspase-3/7活性は上昇し、アポトーシスが誘導された。PA投与時にsiRNAを用いてIRE1又はPERKを抑制しERストレス蛋白活性化を抑制すると、いずれの場合もアポトーシスは抑制された。PA投与時にAtg7をKDしオートファジーを強力に抑制するとアポトーシスは亢進し、Rubiconを抑制しオートファジーを亢進させると、ERストレス蛋白活性化及びアポトーシスは抑制された。一方、野生型マウスに高脂肪食を投与すると、1ヶ月後から肝臓でRubicon発現増加を伴うオートファジー抑制を認め、3ヶ月後にERストレス蛋白活性化及び肝細胞アポトーシスを認め、1年後に約40%の個体で肝発癌を認めた。高脂肪食を1ヶ月摂取させたMx1-Cre Atg7fl/flマウスにpoly IC投与しAtg7遺伝子を欠損させオートファジーを抑制すると、肝細胞アポトーシスは亢進し、肝障害が増悪した。以上より、過剰脂肪酸はRubicon発現を増加させてオートファジーを抑制し、ERストレス蛋白活性化亢進を介して肝細胞アポトーシスを誘導した。持続的肝細胞アポトーシスは肝線維化・肝発癌を誘導することから、NASHではオートファジー抑制による持続的肝細胞アポトーシスが、肝線維化・肝発癌に寄与していると考えられた。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Biol. Chem.
巻: 288 ページ: 30009-30018
10.1074/jbc.M112.443093