研究課題/領域番号 |
23390198
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
近藤 茂忠 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 特任助教 (40304513)
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キーワード | 機能性RNA / 悪性腫瘍化 / ノンコーディングRNA / VEGF / FGF-2 / 腫瘍血管新生 |
研究概要 |
本研究では、VEGF標的薬と抗がん剤により活性化される「悪性腫瘍化RNAプログラム」を解明し、このプログラムによるがん細胞と腫瘍間質細胞の悪性化の全容解明を目的とする。本年度に実施した研究の成果は以下である。 1VEGFとFGF-2遺伝子領域における転写スイッチングの分子機構の解明 Vegf ncRNAとFgf-2 ncRNAの転写を制御するプロモーター領域を特定し、これらの転写活性化に重要な転写共役因子および転写活性化因子を同定した。これらの転写因子はVEGF標的薬によって活性化することも明らかにした。 2変異型p53がVegf ncRNAとFgf-2 ncRNAの発現と機能に及ぼす影響、野生型p53はVEGFmRNAとFGF-2mRNAの転写を抑制し、その結果、Vegf ncRNAとFgf-2 ncRNAの転写が活性化するのに対し、多くの固形がんで共通する変異型p53(175His、175Leu、248Pro、273Pro)は、VEGF mRNAとFGF-2mRNAの転写を強く活性化した。その結果、転写干渉作用によってVegf ncRNAとFgf-2 ncRNAの転写は抑制されることを見出した。In situハイブリダイゼーション解析を行ったところ、この現象は変異型p53(175His、248Pro、273Pro)をもつヒト大腸…直腸がん組織でも実際に起こっていることが認められた。一過性遺伝子導入実験では、Vegf ncRNAは変異型p53mRNもサイレンシングできた。また、Fgf-2 ncRNAと変異型p53の結合について解析した結果、Fgf-2 ncRNAは変異型p53と結合できないことが分かった。この結果は、Fgf-2 ncRNAは野生型p53のみを特異的に阻害することを意味している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画に必要な実験材料(各ncRNA,p53の発現プラスミド、siRNA、プロモーター・コンストラクト)や実験手法(レポーターアッセイ、クロマチン免疫沈降法、In situハイブリダイゼーション法、蛍光免疫染色法)を既に完備していたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の今後の推進方策については、当初予定通り以下の課題を重点的に検討する予定である。平成24年度には、Vegf ncRNAとFgf-2 ncRNAによる「p53腫瘍抑制システム」の破綻ががん細胞の形質をどのように、どの程度悪性化させるのか、さらに、癌幹細胞様形質を獲得させるのかについて検討を行う。VegfncRNAとFgf-2ncRNAに加えて、VEGF欠乏ストレスと低酸素ストレスの相互作用による癌幹細胞様形質の誘導についてもあわせて検討する。これらの結果を基に平成25年度には、ヒト大腸・直腸がん組織における解析を中心に行う予定である。
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