研究概要 |
本研究では、VEGF標的薬と抗がん剤により活性化される「悪性腫瘍化RNAプログラム」を解明し、このプログラムによるがん細胞と腫瘍間質細胞の悪性化の全容解明を目的とする。本年度に実施した研究の成果は以下である。 Vegf ncRNAとFgf-2 ncRNAによる「p53腫瘍抑制システム」の破綻ががん細胞の悪性形質変化に及ぼす影響について解析した。その結果、p53により誘導されるアポトーシス促進遺伝子(Bax, PUMA, Noxa)の発現が抑制されており、各種抗がん剤(5-FU, irinotecan, etoposide, doxorubicin, cisplatin)および低酸素によるアポトーシスが著しく低下していた。一方、p53により発現が抑制されている血管新生促進遺伝子(VEGF, HIF-1a, EG-VEGF, Endoglin, FGF-2, FGF-BP1, Cox-2)の発現が有意に増加していた。 がん幹細胞様形質については、大腸がん幹細胞マーカー遺伝子であるCD133とCD166の発現増加が認められた。さらに、がん幹細胞様形質の1つであるスフェロイド形成能がコントロール細胞に比べ30倍以上亢進していた。 これらin vitroでの悪性形質化に一致して、ヌードマウス皮下移植腫瘍はアバスチン、5-FUに対する抵抗性を示した。腫瘍を免疫組織科学学的に解析した結果、アバスチンや5-FU処理をしたにも関わらずアポトーシス細胞が著しく少なく、一方、腫瘍新生血管が多い結果となった。
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