研究課題/領域番号 |
23390201
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80228741)
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研究分担者 |
是永 匡紹 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (70420536)
岸 文雄 川崎医科大学, 医学部, 教授 (40153077)
池田 正徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (30315767)
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 助教 (70550961)
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キーワード | ミトコンドリア / mitophagy / Parkin / autophagy / エストロゲン |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)起因性酸化ストレスに対するエストロゲンの効果を検討する目的で、4-6週齢のHCV全遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(HCVTgM)とコントロールマウス(C57BL/6)に対して卵巣摘出(Ovx)を行い、Ovx群とSham群の4群(TgM-Ovx,TgM-Sham,nonTgM-Ovx,nonTgM-Sham)を設定し6ヶ月齢での肝組織、'酸化ストレス、ミトコンドリア障害を解析した。TgM-Ovx群は他の3群に比べて体重、ALT値、レプチン値が高く、肝内中性脂肪含有量と活性酸素種(ROS)産生量が高かった。Ovxにより惹起された酸化ストレスに対してコントロールマウスでは抗酸化能が代償性に上昇したが、TgM-OvxではSOD2,GPx1などの抗酸化酵素はむしろ低下する傾向に有り、これらの抗酸化酵素の発現を調整するミトコンドリア蛋白であるSIRT3の発現も低下していた。さらにSIRT3を制御するPGC1αの肝内発現量が有意に低下していた。以上の成績からHCVTgMにおいてエストロゲンは抗酸化的に作用するが、HCVタンパクは酸化ストレスに対する代償惟の抗酸化機能を抑制することで酸化ストレスを増幅すると考えられた。 上記研究とは別にHCV蛋白がミトコンドリアの品質管理であるmitophagyに及ぼす影響についても検討を行った。HCV全遺伝子の組み込まれたレプリコン細胞を用いた解析において、HCVコア蛋白はmitophagyを制御する蛋白のひとつであるユビキチン結合酵素のParkinと結合することで、Parkinのミトコンドリアへの局在を阻害し、結果的にmitophagyを抑制することを明らかにした。この成績はHCVによるミトコンドリア障害に対してHCVがさらにミトコンドリアの品質管理をも阻害することを意味し、C型肝炎の病態、ひいては肝発癌機構に重要なインパクトを与えるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ミトコンドリアbiogenesisの観点からミトコンドリアの晶質管理を行うmitophagy≧C型肝炎ウイルス(HCV)タンパクとの相互作用を検討したところ、HCVコア蛋白がmitophagyのkey moleculeのひとつであるParkinと結合し、mitophagyを抑制することを証明することができた。この研究成果は当初の予想していた以上のものであった。卵巣摘出HCVトランスジェニックマウスにおけるミトコンドリア障害の研究はほぼ計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
HCVコア蛋白によるmitophagyの抑制がミトコンドリアのbiogenesisを抑制するのか否かについて明らかにしていく。また、mitophagyの抑制とアポトーシスとの関係について検討を行い、肝発癌過程における両者のクロストークの役割を明らかにする。
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