研究課題/領域番号 |
23390202
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小嶋 聡一 独立行政法人理化学研究所, 分子リガンド生物研究チーム, チームリーダー (10202061)
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研究分担者 |
相崎 英樹 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (00333360)
宮澤 恵二 山梨大学, 大学院・医学工学総合研究部, 教授 (40209896)
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キーワード | C型肝炎ウイルス(HCV) / NS3 / TGF-β受容体 / 肝硬変 / キメラマウス / コラーゲン |
研究概要 |
1.NS3によるTGF-β疑似活性を介する肝線維化誘導の検証:組換えNS3ならびに組換えTGF-βは、ヒト肝細胞株Hc、ヒト肝星細胞株LX-2において、線維症に関与する標的遺伝子群(TGF-β、collagen 1α1)の遺伝子発現を亢進することを、リアルタイムRT-PCRにより確認した。 2.HCV肝疾患モデル系(ヒト肝キメラマウス)を用いた検証:ヒト肝置換キメラマウスにHCV(J6/JFH-1キメラウイルス)を感染させ、肝線維化、肝硬変の進展を観察した。21、56、75日目に死亡または瀕死となり、1匹のみ110日間継続して観察可能であったが、血中のHCV RNA量が10^5 copies/mlと低めの経過を示した。いずれのマウスも解剖し、肝臓の組織の病理解析を行っている。また、4週間後からNS3-TGF-β受容体結合阻害抗体を11週間、2回/週(0.5mg/kg、5mg/kg)投与した。感染2週間後、HCV RNA濃度は2~10×10^5 copies/mlに達し、その後もウイルス量はほぼ一定であった。現在、阻害抗体が肝線維化、肝硬変の病態形成に与える抑制効果について解析中である。 3.NS3のTGF-β受容体結合・活性化機構、TGF-β様シグナル伝達機構の解析:大腸菌で発現したNS3とTGF-βI型受容体を部分精製後、in vitroで混合し、native PAGE法にて複合体形成を検討した。混合により新たなバンドの出現を認めたので、これが両者の複合体であることの確認を進めている。 4.HCV肝疾患患者検体における確認:患者検体において非実質細胞、特に肝星細胞が、NS3と同じ非構造タンパク質のNS5Aを発現しているらしいことを示す染色結果を得た。 5.5.スクリーニング:プローブを設計するにとどまり、実行までに至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度末までには1カ月残っているので、Gene Chipや、動物モデルの結果、シグナルトランスダクションの解析は、有る程度進むことが予想されるが、NS3がプロテアーゼ活性を保持しているもののTGF-β疑似活性を失うという当初想定していなかった事実に直面し、高いTGF-β疑似活性を発現する組換えNS3プロテアーゼを作り直すのに4カ月を要してしまった。また、外部委託でキメラマウスの動物実験を開始する契約に予想外に時間がかかり、スタートが3カ月遅れてしまった。これらのことから研究計画が3カ月遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
高いTGF-β疑似活性を発現する組換えNS3プロテアーゼの作製・精製法が確立できたので、同タンパク質を大量精製し、計画の遅れを取り戻す。動物モデルとしてSCIDマウスを用いたヒト肝移植キメラマウスに加えてNOGマウスを用いたヒト肝移植キメラマウスでの解析も試みる。分子機構の解析を進め、臨床検体での検証を行う。また、今年度できなかったスクリーニングを行い、TGF-β疑似活性抑制候補化合物を得る。
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