研究課題/領域番号 |
23390202
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小嶋 聡一 独立行政法人理化学研究所, 分子リガンド生物研究チーム, チームリーダー (10202061)
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研究分担者 |
相崎 英樹 国立感染症研究所, ウイルス第2部, 室長 (00333360)
宮澤 恵二 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (40209896)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス(HCV) / NS3 / TGF-β受容体 / 肝硬変 / キメラマウス / コラーゲン |
研究概要 |
1.NS3によるTGF-β疑似活性を介する肝線維化誘導の検証:炎症性サイトカインの一つであるTNF-αあるいはエタノールを前処理したヒト肝細胞株Hcにおいて、組換えNS3が線維症に関与する標的遺伝子群(TGF-β、collagen 1α1)の発現を相乗的に亢進することをリアルタイムPCRにより確認し、その分子機構の一つとしてTNF-αによるTGF-βI型受容体発現の亢進が関与することを見出した。 2.HCV肝疾患モデル系(ヒト肝キメラマウス)を用いた検証:23年度にHCVを感染させたヒト肝置換キメラマウスにおいて、NS3-TGF-β受容体結合阻害抗体が肝線維化の進展を抑制する結果を得たが、24年度に行った同試験においては病態モデルの形成が確認できなかった。この原因と考えられるドナー肝細胞の違いについて現在検証中である。また、スケールアップが簡便である限外濾過およびクロマトグラフィー法により、感染性を維持したHCV粒子の高効率な濃縮精製に成功した。 3.NS3のTGF-β受容体結合・活性化機構、TGF-β様シグナル伝達機構の解析:大腸菌で発現した組換えタンパク質を用い、NS3がTGF-βの I型受容体だけでなく、II型受容体とも相互作用することを見いだした。しかし、I型およびII型受容体の共存によるNS3への結合の増強作用は見いだされず、TGF-βによるリガンド受容体複合体の形成とはメカニズムが異なる可能性が示唆された。 4.HCV肝疾患患者検体における確認:患者肝切片におけるNS3の染色を試みたが、特異的な発現が認められなかったため、現在染色条件の再検討を行なっている。 5.NS3-TGF-β結合阻害物質のスクリーニング:レポーターアッセイ実施をし、NS3の結合を阻害するモノクローナル抗体を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCVのNS3プロテアーゼがTGF-β疑似活性を発現し肝線維化を引き起こすという作業仮説について、ヒト検体における検証については染色条件の最適化中であるが、培養細胞及び動物レベルにおいては概ね検証が済んでいる。またシグナル活性化の分子機構について、NS3とTGF-β受容体との結合を証明できており、炎症性サイトカインによる受容体発現亢進を介したシグナルの増強について示唆する知見も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
NS3によるTGF-βシグナル活性化については、TGF-βI型/II型受容体に対するsiRNAを用いたノックダウン実験、ヨードラベル化したTGF-β(或いはNS3)を用いた結合実験、さらにはNS3-TGF-β受容体複合体のX線結晶構造解析を試み、より詳細な分子機構について解明を進める。またHCV肝疾患患者検体における検証のため、NS3とTGF-β受容体の共局在を免疫染色により確認するとともに、NS3を検出するELISAを確立して血漿NS3濃度と肝線維症/肝硬変の病態進展との関連について解析を試みる。
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