研究課題
(1)心房細動のGWAS研究をさらに展開し、開始時の6遺伝リスクから12遺伝リスクに対象が大幅に増えた。このうち6つは人種を超えたリスク、4つは欧米人特異的リスク、2つは日本人特異的リスクであった(論文投稿中)。(2)今年は、12リスクのうち有意水準の高かった2リスク(ラボネームAF1,AF2)の機能解析を行った。AF1は近傍の遺伝子Pix2の転写調節をエピゲノム制御することが明らかとなった。AF2は、心筋細胞の細胞周期を影響することにより細胞増殖に影響することが示唆された。(3)心房細動と炎症の研究では、心房伸展によりpannexin-2を介してATPが放出され、これがマクロファージの遊走を刺激すること、これが心房リモデリング、心房頻脈性不整脈の誘発に関与することが判明した(論文投稿中)。一方、TLR4のKOマウスを用いた検討では、圧負荷刺激や高血糖などで野生型マウスとKOマウスで差を認めず、TLR4は心房リモデリングへの影響は大きくないものと考えられた。(4)突然死のGWASで同定されたNOS1APの研究では、NOS1AP KOでベースラインから酸化ストレスの影響が強く、圧負荷により酸化ストレスの影響、心機能の低下が野生型マウスに比べてKOマウスで強く、死亡率も有意に増加した。NOS1APは、酸化ストレスの増強により突然死を増加させたことが示唆される。(5)ヒスープルキンエ系特異的に発現する転写因子のKOマウスを作成し解析したところ、ベースラインで不整脈の出現が増加し、心筋梗塞後の不整脈出現が有意に増加した。複数のヒトの家族性突然死症候群で遺伝子変異、遺伝子多型の探索をしたところ、2家系で遺伝子変異が同定され、6患者で希少遺伝子多型の存在が確認された。同遺伝子はヒト突然死の新たな原因遺伝子であることが示唆される。
1: 当初の計画以上に進展している
pannexin-2およびNOS1APの解析はおおむね終了し、論文投稿あるいは論文準備中となり、当初の計画は順調に進んでいる。これに加えて、心房細動のGWAS研究がさらに発展し、申請時明らかになっていた6リスクから12リスクに対象が倍増した。研究過程で当初想定していなかった心臓突然死の新たな候補が想定され、ヒト疾患でも遺伝子異常、遺伝子多型が同定された。この2点から、当初の計画以上に進展していると自己評価する。
新たに同定された心臓突然死原因遺伝子の候補の解析を中心に行い、候補から確立した概念とすることが次年度の達成課題と考える。それ以降は、同遺伝子類縁遺伝子が2つほど想定されることから、これらがヒト心臓突然死の原因遺伝子となるかを新たな検討項目として追加する。心房細動GWAS結果の機能解析は、候補遺伝子が12と倍増したことから、すべてを検討することには無理がある。そこで、優先順位を絞ってオーダーメイド医療へ実現性が高いものから解析を行うことを計画する。
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