研究課題/領域番号 |
23390208
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室原 豊明 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究分担者 |
新谷 理 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (20309777)
柴田 玲 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 特任講師 (70343689)
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キーワード | リンパ管再生 / 再生医療 / 細胞治療 / マクロファージ / 間葉系幹細胞 / 脂肪組織由来再生細胞 / 血管新生 / 成長因子 |
研究概要 |
背景:2次性リンパ浮腫は、癌の外科的治療(リンパ節郭清)あるいは放射線治療の合併症としてしばしば発症する。これらは我が国でも多くの患者のQOL低下をもたらしているが、治療選択肢としては限られている疾患である。我々はこれまで虚血組織における脂肪組織由来間葉系幹細胞(ADRC)移植の血管新生増強効果を報告してきた。 目的:動物リンパ浮腫モデルにおいてADRC移植がリンパ管新生を促進し、リンパ浮腫に対する治療的リンパ管新生となりうるか検討した。 方法と結果:C57BL/6Jマウス皮下脂肪より分離したADRCを培養すると2週間後にリンパ管内皮細胞(LEC)の特性を呈した(免疫染色、real time PCR)。また同時にADRCからVEGF-Cの分泌も確認された(real time PCR、ELISA)。次にマウス尾部リンパ浮腫モデルを作成しADRCを移植したところ、2週間後には明らかに浮腫の改善効果が認められた(p<0.05)。また組織学的検討でもADRC移植群では新生リンパ管数が有意に増加していた(p<0.000005)。ただし移植されたADRCがリンパ管内皮細胞へ分化する割合はごくわずかであることがGFP-tgマウスを使った検討で確認された。このリンパ管新生の増強効果はパラクライン作用が主要機序と考えられ、移植部組織ではリンパ管新生促進因子のVEGF-CおよびHGFの発現が増強していることが確認された(p<0.05)(real time PCR)。またvitroの実験においてもADRCの培養上清添加によりヒト皮膚由来LECの遊走能および増殖能が亢進し、またそれぞれに関連しているeNOSおよびErkの燐酸化が促進すること(western blot)を確認した。 結語:ADRC移植によるリンパ管再生は難治性リンパ浮腫に対する新たな治療戦略となりうる。またその主要機序はパラクライン作用が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスリンパ浮腫モデルに対しての脂肪組織由来間葉系幹細胞移植がリンパ管新生を促進して、さらにはリンパ浮腫を軽減しうることを実証しえた。またその治療効果の機序解明においてもある一定の成果を上げることができている。すなわち、現段階では小型哺乳類(マウス)レベルにおける有効性の検証という目的は達成している。
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今後の研究の推進方策 |
中~大動物のリンパ浮腫モデルを作成して、小型動物と同様に自己脂肪組織由来間葉系幹細胞移植による治療的リンパ管新生が有効かつ安全であるかを検証する。以上が証明されれば、自己組織由来細胞なので、比較的安全なリンパ管再生利用の臨床応用が可能になると思われるので、早期にTR研究を進める。
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