研究概要 |
我々は、1996 年より遺伝性不整脈疾患の詳細な臨床情報とゲノムDNA を集積しており、現在、3000名近い症例(約1200 家系)を対象にゲノム解析を行っている。遺伝子異常同定率は疾患によって異なり、遺伝性QT延長症候群では約6割、ブルガダ症候群では1割程度であった。また、昨年度は日本で初めて,多数例でのカテコラミン感受性多形性心室頻拍と不整脈源性右室心筋症で関連遺伝子の検索を行い報告した (Kawamura M et al., Circ J. in press; Ohno S et al., Circ J. in press)。発見された遺伝子変異について培養細胞を用いたパッチクランプ法や蛋白イメージング法を用いて機能解析を行った(Kimura H et al., Circ Cardiovasc Genet. 2013; Ishikawa T et al., Circ J. 2013; Hattori T et al., Cardiovasc Res. 2012; Doi T et al., Circ Cardiovasc Genet. 2011など)。さらにコンピュータ・シミュレーション法で、機能障害が病態とどのように関連するか調べた(Nakajima et al, Circ J. 2012; Yamazaki M et al., Heart Rhythm. 2012)。また、遺伝性QT延長症候群症例から得られたiPS細胞を心筋に分化することによって、個々の遺伝的背景を保持した心筋細胞を作成し機能解析をおこなった。これまでの業績を評価され、Circulation Research誌からKチャネルと遺伝性不整脈に関する総説の依頼を受け執筆した (Shimizu W & Horie M, Circ Res. 2011)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝性不整脈の3000名近い症例(約1200 家系)をデータベースとして、その遺伝的背景を、遺伝子検索で発見し、その機能解析を通して病態との関連を統合的に調べてきた。昨年度は、日本で初めてまとまった数での検討となるカテコラミン感受性多形性心室頻拍と不整脈源性右室心筋症で関連遺伝子検索を行い報告した (Kawamura M et al., Circ J. in press; Ohno S et al., Circ J. in press)。また、不整脈の機能解析に新たなアプローチとなる心房筋全体の再構築が可能なモデルを、研究分担者の芦原が構築した。これを用いて心房細動の発生と維持における線維芽細胞の関与を検討し、原著論文として発表した(Ashihara et al., Circ Res. 2012)。当初の24年度申請における企画として、iPS細胞を用いたアプローチも予定していたが、それの先鞭となる研究として、2つの論文を発表することができた。うち一つは京都大学CiRA研究所の山中教授との共同研究である(Egashira T et al., Cardiovasc Res. 2012; Kamakura T et al., Circ J. in press)。エクソン内に存在するスプライシング促進領域(exonic splicing enhancer: ESE)に関する研究もiPS細胞を作成して順調に進行中であり、当初の平成24年度の研究計画はおおむね順調に達成されたと考える。
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