研究課題/領域番号 |
23390212
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中山 博之 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (40581062)
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研究分担者 |
朝日 通雄 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10397614)
藤尾 慈 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20359839)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | カルシウムチャネル / 心不全 / プロテインキナーゼA / カルモデュリン依存性キナーゼ / 細胞死 |
研究概要 |
慢性心不全患者において血中カテコラミンの上昇と、L型カルシウムチャネル(LTCC)の細胞内サブユニットであるbeta2a subunit(以下LTCC beta2a)の発現上昇が認められる。申請者はLTCC beta2aの心筋過剰発現マウスにおいて持続カテコラミン受容体刺激によりマウスの個体死が起こる事を報告し、LTCC beta2aが心不全の予後改善のための治療標的として極めて重要である事を見出した。しかしながらカテコラミン刺激によるLTCC beta2aの機能修飾と病態との関連は尚不明である。LTCC beta2aは、カテコラミン受容体刺激により活性化するプロテインキナーゼA(PKA)やカルモデュリン依存性キナーゼ(CaMKII)のリン酸化により、LTCCのCa2+流入を増大させる。本研究においてLTCC beta2aのリン酸化の意義を解明するために、前年度に作製したCaMKII過剰発現マウス、非リン酸化変異体LTCC beta2a 過剰発現マウスの表現型解析を施行した。①CaMKIIの過剰発現マウスは、従来の報告と異なり生理条件下において病的な表現型を示さなかった。野生型マウスの圧負荷モデルにおいてCaMKIIの活性の上昇が認められたため、CaMKII過剰発現マウスにおいて圧負荷モデルを用いて病態を解析したところ、心不全を呈した。②LTCC beta2aのリン酸化の意義を検討するために野生型及び非リン酸化変異体LTCC beta2a過剰発現マウスの比較をおこなった。過剰発現した蛋白の発現レベルが同程度であることを確認した後に、持続カテコラミン受容体刺激を施行したところ、死亡率に有意な差を認めなかった。③LTCC beta2aの非リン酸化変異ノックインマウス作製のためのキメラマウス6ラインを得たのち、ヘテロ変異マウスのラインを現在確立中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作製した3種類の遺伝子改変マウスモデルのうちCaMKII過剰発現マウス及び非リン酸化変異体LTCC beta2a 過剰発現マウスは予定通り順調に表現型解析が進展していると考えられる。非リン酸化変異ノックインマウスは前年度にターゲッティングベクターに不備があり再構築したため、予定より約6か月の遅れを認める。以上を鑑み、総合的にみてやや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に開始した野生型及び非リン酸化変異体LTCC beta2a過剰発現マウスの病的ストレスに対する表現型の差異について解析を進める。具体的には、①持続カテコラミン受容体刺激により生じた組織学的変化の差異についての解析を進める。②圧負荷心不全モデルを用いて両過剰発現マウスの心肥大から不全にいたる過程における病態を、心エコー法および病理学的解析により明らかにする。持続カテコラミン受容体刺激により死亡率に有意な差を認めなかった原因として受容体刺激によるCaMKIIの活性化が十分でなかった可能性が考えられる。野生型マウスにおいて圧負荷によりCaMKIIの活性化が確認できており、LTCC beta2aのリン酸化の意義を解析する上で、より適したモデルであると考えられる。③CaMKII過剰発現マウスとLTCC beta2a過剰発現マウスの交配により二重変異マウスを作製しCaMKIIによるリン酸化の病態的意義を確定する。④非リン酸化変異ノックインマウスのヘテロ変異マウスのラインの確立後ホモ変異マウスのラインを作製する。
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