研究課題/領域番号 |
23390213
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤澤 宏 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20396683)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 循環器・高血圧 / ストレス / 生体分子 |
研究概要 |
8週齢の野生型マウスに対して横行大動脈縮窄術(transverse aortic constriction: TAC)を行うと、10日目の時点で心房重量が増加し、心房組織では線維化(Masson trichrome染色)と肥満細胞の浸潤(トルイジンブルー染色)および活性化(Rhodamine-avidin染色)が認められ、ランゲンドルフ灌流下に電気的に心房刺激を行うと心房細動が誘発される。TAC後10日目の心房組織ではEndothelin 1(ET-1)の遺伝子発現が増加していることを見出した。 ET-1刺激によりマウス腹腔由来肥満細胞が脱顆粒することをトルイジンブルー染色およびβ-hexominidaseの放出を定量することにより確認した。さらに、ET-1による肥満細胞の活性化がマクロファージに与える影響を検討するために、マウス腹腔由来肥満細胞とマクロファージ系細胞株RAW264.7をBoyden chamberを用いて共培養を行ったところ、RAW264.7の遊走能は、ET-1刺激したマウス腹腔由来肥満細胞との共培養により亢進するが、抗MCP-1(monocyte chemotactic protein 1)中和抗体を添加することで抑制された。私たちはこれまでに、血行力学的負荷による心房組織へのマクロファージ浸潤や心房リモデリング、心房細動誘発性が、dominant-negative MCP-1の発現ベクターの筋注による有意に抑制されることを見出している。 以上の結果より、血行力学的負荷による肥満細胞の活性化にET-1が関与し、ET-1は肥満細胞を活性化し、MCP-1を介してマクロファージの遊走を亢進させることで、心房リモデリングを促進することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究によって、肥満細胞の活性化に関わる候補因子の一つが同定され、肥満細胞-マクロファージを軸とする炎症カスケードの活性化機構の一端が明らかとなった。心房細動発症に関わる炎症カスケードの主要コンポーネントと活性化機構が明らかになったという点において、本研究は計画通りにおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画および研究体制に問題はなく、当初の予定通りに研究を推進していく。心筋ストレス刺激による炎症誘導機構と、心房線維化に関わる炎症ネットワークを解明し、その研究成果を基盤として心房細動のアップストリーム治療の標的を探索し、将来的には臨床応用を目指していく。 研究代表者の赤澤の統括の下、大阪大学大学院医学系研究科の大学院生3名が動物実験および培養細胞実験を行っていく。また、連携研究者の小室との間で緊密に情報交換およびディスカッションを行い、研究課題を推進していく。
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