研究概要 |
樹状細胞(Dendritic cell:DC)の心筋梗塞後左室リモデリングにおける役割を、ジフテリア毒素(DT)によってCD11c陽性細胞すなわちDCを選択的に除去できるCD11c-DTRマウスの骨髄を放射線照射後の野生型(WT)マウスに移植した骨髄移植モデルを用いて検討した。DTを投与したDC-ablationマウスでは梗塞後心筋にDCの浸潤を認めず、左室リモデリングが増悪した。DC-ablation マウスではday7の梗塞部位でLy6chigh monocyte/macrophageの浸潤が増加し、向炎症性サイトカインの発現亢進、MMP-2や MMP-9の活性化が観察され、反対にLy6clow monocyte/macrophageの浸潤が減少し、抗炎症性サイトカインIL-10の発現は低下していた。adoptive transferを行い、左室リモデリングの増悪がDCを除去したことによることを確認した。IL-17産生細胞は心筋梗塞巣では90%以上がγδT細胞から分泌される。IL-17-KOマウスやTCRγδ-KOマウスでは、梗塞後2日目でMMP1,3,9, MCP-1, TNFα, IL-1β, IL-6の発現は野生型マウスと差がない。この結果は、IL-17産生性γδT細胞は梗塞早期の炎症、損傷治癒機転には影響を及ぼさないことを意味する。一方で、梗塞後7日目以降では、IL-17はCXCL1を介して好中球の浸潤を遷延化させ、マクロファージに対しては、向炎症性(M1)>損傷治癒(M2)へ傾かせ、線維芽細胞に対しては増殖、collagen産生を促進させ、炎症の慢性化、臓器の破壊を促進させる方向に作用している。急性期の炎症反応(=損傷治癒機転)には影響を及ぼさず、炎症の遷延化過程に深く関与するIL-17産生性γδT細胞は心筋梗塞後心不全発症予防の治療標的として有望である。
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