研究課題
1)ヒト非小細胞肺癌におけるFGF9の発現と予後との関係今回我々は2001年8月から2006年12月までの期間における当院での非小細胞肺癌手術検体(91例)を用いて、mRNAレベルでFGF9発現症例(10例)と非発現症例(81例)における臨床データの比較検討を行った。組織型はFGF9発現例では腺癌と大細胞癌が多くを占め、扁平上皮癌は含まれていなかった。FGF9発現例では、術後病理診断で術前には確認されていなかった肺内転移が確認された症例が多く、病理病期で進行期と診断される傾向にあった。FGF9発現例と非発現例における術後再発率は60%と21%(p=0.038)であり、その再発形式を比較すると、FGF9発現例では胸膜播種やリンパ節転移による再発が多い傾向にあった。3年生存率は40%と88%(p<0.0001)で、有意に予後が悪かった(p<0.0001)。以上よりFGF9は非小細胞肺癌の予後不良因子である可能性が示唆された。本知見をLung Cancerに発表した。2)肺上皮細胞特異的に線維芽細胞増殖因子9 (FGF9)をドキシサイクリン依存性に強制発現することにより肺癌を発症するマウスモデルの解析については、これまでの結果を統括して、Cancer Resに発表した。3)FGF受容体を標的としたチロシンキナーゼインヒビターのin vivoにおける抗腫瘍効果FGF受容体を選択的に抑制するPD173074 (Pardo, Cancer Res, 2009)を用いその有効性をFGF9誘導肺癌モデルマウスで確認をする実験を行った。経口50mg/kg連日14日間投与を行い、組織学的に腫瘍形成の評価、腫瘍血管形成の評価、アポトーシスの評価等を行った。
2: おおむね順調に進展している
我々は肺上皮細胞特異的に線維芽細胞増殖因子9 (FGF9)を強制発現することにより肺癌を発症するマウスモデルを利用し、FGFの発癌における役割を明らかにしている。FGF受容体チロシンキナーゼを標的とした分子標的治療に繋げる基礎的データを蓄積しており、論文化を進めている。さらにFGF受容体インヒビターの有効性を検証し、同種薬剤に感受性をもつ肺癌患者の同定、治療計画に有用な情報を提供する。当該施設において、研究人員の確保がされており、研究施設、および施設機器も充実していることがそれらの要因であると考えられる。
今後も、当初の研究計画通りに遂行する。FGF受容体を標的としたチロシンキナーゼインヒビターのin vivoにおける抗腫瘍効果をFGF9誘導肺癌モデルマウスで検証し、化学発癌モデルと比較を行う。上記で作成する肺癌モデルに対し、FGF受容体を選択的に抑制するPD173074を用い有効性を確認する (Pardo, Cancer Res, 2009)。経口50mg/kg連日14日間投与を行い、組織学的に腫瘍形成の評価、腫瘍血管形成の評価、アポトーシスの評価等を行う。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Lung Cancer
巻: 83 ページ: 90-6.
10.1016/j.lungcan.2013.10.016.
Cancer Res
巻: 73 ページ: 5730-41.
10.1158/0008-5472.CAN-13-0495.