研究課題
細気管支幹細胞は、「肺炎症時の組織修復に重要」と考えられている肺組織幹細胞である。2001年にvCE細胞,variant CCSP (Clara cell secretory protein)-expressing細胞,として発見され,その後の研究によって,気道分岐部のNEB (neuroepithelial body)や終末細気管支のBADJ (bronchioalveolar duct junction)のニッチに存在することが分かってきた。この細胞はクララ細胞などの気道細胞へ広く分化する一方で、逆にクララ細胞から細気管支幹細胞へ再分化転換することも知られている。しかしこの分子機構は不明である。われわれはクララ細胞に発現する蛋白分解酵素SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)を20年間にわたって研究しており、「SLPIの阻害が細気管支幹細胞への再分化転換を促すこと」を見い出した。本研究ではこの先行知見を礎に、再分化転換機構を解明し、炎症性肺疾患の新規治療法の開発へとつなげていく。昨年度は、SLPIの下流シグナルとして再分化転換に関わる因子を同定する目的で、SLPI欠損マウスの肺細胞を用いてマイクロアレイ解析を行い、SLPIの下流シグナルに関連していると疑われる遺伝子群を同定することに成功した。そこで今年度では、昨年度同定した遺伝子群の中に、再分化転換機構に関わる分子が実際あるのかを検証した。その結果、SLPIシグナルの下流で再分化転換機構に深く関わっていると考えられる分子を同定することができた。現在その分子の欠損マウスなどを用いながら、再分化転換機構の解明を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当該研究では、細気管支幹細胞の再分化転換機構の分子メカニズムを明らかにすることを目指しており、当初の計画では、平成24年度以降に、SLPIとの結合が疑われている18個の蛋白質をsiRNAでin vivoノックダウンすることによって、SLPIの下流シグナル分子を明らかにする予定であった。しかし、その実験を行う前に、SLPIの下流シグナル分子をより網羅的にスクリーニングすることが、当該研究全体の推進に有益と考え、SLPI欠損マウスの肺細胞を用いてマイクロアレイ解析を行った。この実験により、SLPIの下流シグナルに関連していると疑われる遺伝子群を広くスクリーニングすることができた。このスクリーニング手法が当該研究課題の目的に照らして適切であったことは、今年度これらの遺伝子群の中に、再分化転換機構に関わっている「真の分子」を同定できたことにより示されている。
SLPIの下流シグナルとして再分化転換に関わる因子を同定する目的で、SLPIの下流シグナルに関連していると疑われる遺伝子群をマイクロアレイ解析でスクリーニングし、その中に「再分化転換機構に関わっている分子」を今年度同定することができた。今後、その分子の欠損マウスなどを用いながら、再分化転換機構の全容を明らかにしていく方針である。
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