研究課題
細気管支幹細胞は,「肺炎症時の組織修復に重要」と注目されている肺組織幹細胞である。この細胞はクララ細胞などの気道細胞へ広く分化する一方で,逆にクララ細胞から細気管支幹細胞へ再分化転換することが知られている。しかしこの分子機構は不明である。申請者はクララ細胞に発現する蛋白分解酵素SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)を20年間にわたって研究しており,「SLPIの阻害が細気管支幹細胞への再分化転換を促すこと」を見い出した。本研究ではこの先行知見を礎に,①SLPIの下流シグナル分子のエピジェネティクスや②SLPI結合蛋白質の解析から,再分化転換機構を解明し,③炎症性肺疾患の新規治療法の開発へとつなげていく。本研究で得られる細気管支幹細胞についての知見は,炎症性肺疾患の新規治療開発に止まらず,幹細胞調製の一般技術へと波及することが期待される。今年度は、当該研究計画の4年目にあたる。昨年度までに、細気管支幹細胞の再分化転換機構の分子メカニズムを明らかにすることを目指して、SLPIの下流シグナル分子をより網羅的にスクリーニングしている。具体的には、SLPI欠損マウスの肺細胞を用いてマイクロアレイ解析を行った。この実験により、SLPIの下流シグナルに関連していると疑われる遺伝子群の中に、再分化転換機構に関わっている「真の分子(『bronchiolar progenitor factor (BPF)』と命名)」を同定することができている。そこで今年度は、このBPFの遺伝子欠損マウスを用いることによって、BPFがSLPIの下流シグナルとして働いていることを確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
上述のように、当該研究では、①SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)の下流シグナル分子のエピジェネティクスや②SLPI結合蛋白質の解析から,再分化転換機構を解明し,③炎症性肺疾患の新規治療法の開発へとつなげていく、と計画している。全体計画5年間のうち今年度で4年目が終了し、SLPI下流シグナルとして再分化転換機構へ機能的に関わる分子BPFを同定している。機能的関与を確認している点で、上記の計画ステップ②相当以上の成果を達成しており、「おおむね順調に進展している」と考える。
上述のように、当該研究では、①SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)の下流シグナル分子のエピジェネティクスや②SLPI結合蛋白質の解析から,再分化転換機構を解明し,③炎症性肺疾患の新規治療法の開発へとつなげていく、と計画している。既にこの計画ステップ②相当以上の成果を達成している。研究計画の最終年度にあたる来年度は、SLPI下流シグナルとして同定し再分化転換機構へ機能的に関与を確認した分子BPFについて、炎症性肺疾患の新規治療法へ発展する可能性を調べていく。
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