研究課題/領域番号 |
23390221
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木浦 勝行 岡山大学, 大学病院, 教授 (10243502)
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研究分担者 |
瀧川 奈義夫 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60325107)
堀田 勝幸 岡山大学, 大学病院, 助教 (70379816)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | EGFR / EGFR遺伝子改変マウス / afatinib / everolims / AZD1480 / gefitinib / bevacizumab / 用量依存性 |
研究概要 |
上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異を有する肺癌の発癌・増殖・進展過程を明らかにするため,EGFR遺伝子改変マウスを利用し,免疫組織学的分子生物学的に包括的に解析する。pEGFRとpHER2のリン酸化を非可逆的に抑制出来るアファチニブ(afatinib)はT790M変異を有するゲフィチニブ耐性株に対してもより強い増殖抑制効果を示し,EGFR遺伝子改変マウス(mouse Egfr del E748-A752, EGFR del E746-A75 )のゲフィチニブと比較して全生存期間を有意に延長することを示した。マウス異種移植モデルでVEGF-Aに対する抗体べバシツマブ(bevacizumab)とアファチニブを併用することで,T790Mを有する耐性細胞に対して優れた抗腫瘍効果を示すことを証明し, アファチニブ単剤あるいはベバシツマブ併用での臨床応用の可能性を示した。mTOR阻害薬であるエベロリムス(everolimus) 連日経口投与によりヒトEGFR L858R遺伝子導入マウスの生存期間を無治療群と比較して有意に延長した。JAK1/2阻害薬であるAZD1480はマウスEgfr遺伝子改変マウスの生存期間を無治療群と比較して有意に延長した。エベロリムスもAZD1780も試験管内の実験であるがゲフィチニブ耐性細胞RPC-9細胞株に感受性を残していた。これらの結果は,EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するアファチニブ,エベロリムス,AZD1480の臨床応用の可能性を示している。また,EGFRチロシンリン酸化酵素は用量依存性がないと考えられていたが,マウス異種移植モデルの腫瘍増殖抑制効果,EGFR遺伝子改変マウスでの生存期間の解析,後方視解析であるがヒトでも体表面積が1.5m2未満患者で無増悪生存期間が有意に良好なことから,臨床での用量設定で何らかの対応が必要であることを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EGFR遺伝子改変マウスを使用し,各種チロシンリン酸化酵素阻害薬: TKI(afatinib(非可逆性 Dual TKI of EGFR and HER-2)(Mol Cancer Ther. 2013;12(5):589-97), everolimus (mTOR阻害薬)(Exp Cell Res. 2014,in press), AZD1480 (JAK-1/2 阻害薬)(Lung Cancer. 2014 Jan;83(1):30-6)などの薬剤による抗腫瘍効果,生存期間に与える影響,下流シグナルの変化,EGFR TKIの用量依存性(Cancer Sci. 2013;104(11):1440-6)を明らかしており,成果は米国癌学会,日本癌学会総会で報告し,論文として受理されている。研究計画は予想通りおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
DNA修復酵素欠損マウス(OGG1ノックアウトマウス)の放射線・低濃度発癌性物質曝露による発癌におけるEGFR遺伝子変異の関与を検討し,宿主側のEGFR発癌への影響を明らかにする研究で,低濃度タバコ特異的ニトロサミンでは発癌効率が極めて不良であることとEGFRの遺伝子変異が入らないことが明らかにされた。タバコ特異的ニトロサミンを高濃度にして実験を繰り返している。
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