研究課題/領域番号 |
23390224
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
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研究分担者 |
松井 克之 帝京大学, 医歯学系, 教授 (20256027)
渡辺 賢一 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (70175090)
鈴木 健司 新潟大学, 医歯学系, 講師 (00303123)
池住 洋平 新潟大学, 医歯学系, 講師 (70361897)
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キーワード | 蛋白尿 / 細胞間接着装置 / 心腎連関 / ネフローゼ症候群 / 慢性腎臓病 / ポドサイト |
研究概要 |
研究代表者はこれまでの研究で、蛋白尿発症時にmRNA発現が低下している分子群を同定し、ネフローゼ症候群発症に関わる分子を同定する作業を進めてきた。平成23年度は、ネフローゼ症候群モデルの発症初期にその発現が著明に低下するEphrin Bの性状、機能解析を中心に研究を進めた。特異抗体での検討に加え、Ephrinとligand-receptor関係にある分子であるEphをプローベとして用いた発現解析を行った。また、蛋白尿発症の責任部位であるスリット膜の機能分子であるネフリンとの関係についての検討を行った。Ephrin Bが糸球体上皮細胞膜表面に局在していること、膜性腎症、巣状糸球体硬化症モデルの初期、病的蛋白尿が発症する以前にその発現が低下していることを観察した。この結果はEphrin Bがネフローゼ症候群の早期マーカーとして有用であることを示している。また強制発現材料での検討でEphrin Bは細胞外部でネフリンと結合していることを明らかにした。この結果はEphrin Bはネフリンの関連分子で、糸球体血管壁の蛋白透過性制御に極めて重要な役割を果たしている分子であることを示している。また、Ephrin Bの消化管における発現、炎症性腸疾患モデルマウスでの発現動態の検討を行った。 これらの解析に並行して、Ephrin Bの糸球体上皮細胞特異的ノックアウト(k/o)マウスの作製を進めた。致死とならないヘテロノックアウトの作製に成功した。また部位特異的k/oマウスの作製に必要なCreマウスの作製を進めた。またこれらの作業に並行して、新たな病変に関わる分子の同定を探索するため次世代シーケンサを用いた検討を行い、いくつかの候補分子を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の検討候補分子の中から最重要検討分子としてEphrin Bを選択した。Ephrin Bの性状、病態での動態、他の機能分子との結合性の検討などについて計画通りに研究を進め、膜性腎症モデル、巣状糸球体硬化症モデルでの動態について新たな重要な知見を得ることができた。また、スリット膜の機能分子との結合性について新たな知見を得ることができた。ノックアウトマウスの作製も順調に進んでおり、平成23年度は計画通りに研究を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降も予定通りに進める。Ephrin Bについては、炎症性腸疾患モデル、心不全モデルでの検討を進め、これら病態発症との関わりを検討する。24年度前半にはEphrin Bの糸球体上皮細胞特異的ノックアウト(k/o)マウスの作製が完了する予定で、後半にはこのマウスを用いた機能解析を行う。Ephrin Bについての検討に加え、次世代シーケンサでの検討で、蛋白尿発症の責任分子の候補分子として同定された分子の性状解析を行う。また、研究代表者らがスリット膜の機能維持に関わる重要な分子として報告しているシナプス小胞関連分子、レニンアンジオテンシン系の分子群について、性状の解析、病態発症との関わりについての検討を進め、蛋白尿発症機序の解明、蛋白尿と心疾患に共通する発症機序の解明、新規治療法開発の標的分子の同定を行う。
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