研究課題/領域番号 |
23390224
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
河内 裕 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)
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研究分担者 |
鈴木 健司 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (00303123)
松井 克之 帝京大学, 医学部, 教授 (20256027)
渡邊 賢一 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (70175090)
池住 洋平 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70361897)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 蛋白尿 / 細胞間接着装置 / 心腎連関 / ネフローゼ症候群 / 慢性腎臓病 / ポドサイト |
研究概要 |
研究代表者は、蛋白尿発症時にmRNA発現が低下している分子群を探索し、ネフローゼ症候群発症に関わる分子を同定する作業を進めてきた。これまでの研究で、ポドサイトの細胞間接着装置であるスリット膜の機能維持に重要な役割を果たしており、蛋白尿の発症、他臓器疾患の発症に関連がある分子としてEphrin-B1とシナプス小胞関連分子であるSV2Bを同定し、その機能解析を進めてきた。平成24年度は、これら分子のノックアウトマウスの作成を進めた。全身性のEphrin-B1ノックアウトマウスは致死となることが報告されているためpodocin プロモーターにより制御されるCreマウスを用いた糸球体上皮細胞特異的ノックアウトマウスの作製を行った。SV2Bについては全身性のノックアウトマウスの作製を行った。SV2Bは全身性にノックアウトしたマウスも致死に至らないことを確認した。SV2Bノックアウトマウスで、足突起構造の変化などのポドサイトの形態変化は観察されなかったが、CD2AP、nephrin、NEPH1、ZO-1などのスリット膜機能分子の発現が低下し、その局在が変化していることを観察した。また、SV2Bノックアウトマウスは野生型マウスに比して片腎摘出、アルブミン負荷などに対する抵抗性が低いことを観察した。SV2Bノックアウトマウスにおける他のシナプス小胞関連分子群の発現の解析を行い、シナプス小胞のドッキングに関与するポドサイト膜分子の発現が低下していることを観察した。 これらの観察は、シナプス小胞様の機構がスリット膜、細胞間接着装置の機能維持に重要な役割を果たしていることを示していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で得られた検討候補分子の中から最重要検討分子としてEphrin-B1, SV2Bを選択した。平成24年度は、これら分子のノックアウトマウスの作製を主要課題とした。Ephrin-B1については糸球体上皮細胞特異的ノックアウトマウスの作製に成功し、SV2Bについては全身性のノックアウトマウスの作製に成功した。これらノックアウトマウスでは野生型マウスに比べてスリット膜機能分子の局在が変化すること、各種の傷害刺激に対して脆弱性を示すことを確認し、SV2Bがスリット膜構造、機能維持に重要な役割を果たしていることを明らかにすることができた。現在、これらのマウスを用いた機能解析を進めている。糸球体上皮細胞特異的Ephrin-B1ノックアウトマウスは、スリット膜の形成、構造、機能維持における同分子の役割を解析する上で極めて重要なツールになると考えている。今回確立したSV2Bノックアウトマウスは、消化器、心、脳材料でのSV2Bの機能解析を行う上でも有用である。 以上のような成果が得られており、平成24年度は、ほぼ計画通りに研究を進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成24年度までの取り組みで作製に成功したノックアウトマウスを用いEphrin-B1, SV2Bの分子機能の解析を進める。Ephrin-B1については、podocin promoterとタモキシフェン誘導による部位時期特異的ノックアウトマウスの作製を進め、同マウスを用いてスリット膜の形成、成熟におけるEphrin-B1の役割についての解析を進める。SV2Bについては腎以外の臓器での発現、機能解析を行い、他臓器疾患の発症、心腎連関における関与の検討を行う。Ephrin-B1については、炎症性腸疾患モデル、心不全モデルなど他臓器での病態モデルを用いた解析を進め、これらの病態形成におけるEphrin-B1の役割についての検討を進める。また、SV2B、Ephrin-B1に対し修飾効果を持つと考えられている薬剤の効果の検討を行い、これら分子の制御法についての検討を行う。 Ephrin-B1、SV2B、並びにSV2Bノックアウトマウスで発現変化がみられたスリット膜分子、細胞間接着分子の発現について生検材料を用いた検討を行う。 これらの検討に並行して、次世代シーケンサでの検討を継続して行い蛋白尿発症の責任分子、ポドサイトの機能分子の探索を続ける。
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