研究課題
成体の腎臓は再生しない臓器であるが、胎児期の腎臓では、後腎間葉と呼ばれる組織から糸球体、近位及び遠位尿細管などネフロンを構成する多系統の細胞が分化してくる。我々は、後腎間葉に発現する核内因子Sall1が腎臓発生に必須であること、間葉中のSall1を高発現する集団に多能性の幹細胞が存在することを明らかにしてきた。本計画は、独自に作成した複数の遺伝子改変マウスを用いて、胎児期ネフロン幹細胞で働く分子ネットワークを解明し、その情報を使ってこの幹細胞を自己複製・維持させることを目的とした。ネフロン幹細胞特異的Sall1 欠失マウスでは、胎生期に幹細胞が枯渇した。また薬剤誘導性Sall1 欠失マウスの胎生12.5日にタモキシフェンを投与すると1日でSall1が消失し、最終的には同じ症状になることを見いだした。これらに共通して変動する遺伝子群をマイクロアレイ及び定量PCRで探索し、in situハイブリダイゼーションや免疫染色で確認することで、Sall1の下流候補遺伝子群を同定した。さらにクロマチン免疫沈降を用いてこれらの一部がSall1の直接の標的であることを証明した。そしてSall1が、幹細胞集団では正に、分化中のネフロンでは負に働いて、幹細胞集団を未分化に維持することを解明した。これらの情報を元に、胎生期ネフロン幹細胞の自己複製/維持法の開発中である。通常は生後に消失するネフロン幹細胞を未分化なまま維持できれば、腎臓再生に向けて大きな一歩となると期待される。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Am. Soc. Nephrol
10.1681/ASN.2013080896
Cell Stem Cell
巻: 14(1) ページ: 53-67
10.1016/j.stem.2013.11.010
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp/divisions/integrative_cell_biology/