研究課題
ポリグルタミン病はCAG繰り返し塩基配列の異常延長を原因とする遺伝性神経変性疾患で、変異蛋白質が神経細胞内に集積することが中心的病態であり、治療法開発の重要なターゲットであると考えられているが、集積した変異蛋白質がどのようにしてニューロンの機能障害や細胞死を招くのかについては不明である。本研究の目的は、ポリグルタミン病の初代培養ニューロン・動物モデルや患者剖検組織などを用い、とくに細胞周期調節異常およびJNK経路の異常活性化が神経変性に果たす役割に注目して、分子メカニズムを包括的に解析することである。本年度は、ポリグルタミン病のひとつである球脊髄性筋萎縮症(SBMA)について、マウス初代培養ニューロンモデルを用いて、その病態解明と治療法開発を行った。マウス初代培養ニューロンにSBMAの原因遺伝子である変異アンドロゲン受容体(AR)を発現させたところ、p21やp15などの細胞周期抑制因子の発現レベルが低下し、E2F1、cyclin D1、PCNAなど細胞周期関連分子の発現が増加した。この細胞モデルに細胞周期抑制剤であるflavopiridol(サイクリン依存性キナーゼ阻害剤)を投与したところ、細胞死が抑制され、細胞障害の指標であるLDHのレベルが低下した。また、変異ARの発現により、マウス初代培養ニューロンにおけるリン酸化c-junの量も増加したため、治療的介入としてJNK阻害剤を投与したところ、細胞死が部分的に抑制されたが、その効果はサイクリン依存性キナーゼ阻害剤には及ばなかった。以上から、SBMAの病態には細胞周期異常とJNK活性化の双方が関与していること、および少なくともマウス初代培養ニューロンモデルでは前者の寄与のほうが大きいことが示唆された。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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