• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

造血因子の脳軟膜側副血行促進機序の解明ー脳梗塞亜急性期への臨床応用を目指してー

研究課題

研究課題/領域番号 23390234
研究機関大阪大学

研究代表者

北川 一夫  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70301257)

研究分担者 八木田 佳樹  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20403066)
佐々木 勉  大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (20534879)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2014-03-31
キーワード側副血行 / 脳虚血 / 糖尿病 / 慢性低潅流 / db/db マウス
研究概要

脳梗塞の原因は脳血管閉塞であるが、脳主幹動脈閉塞に際する虚血重症度を規定する最大の要因は、ウイリス動脈輪、脳軟膜動脈吻合での脳側副血行発達の良否である。申請者はこれまで、慢性低灌流に対する脳血管の適応現象として脳軟膜動脈吻合での側副血行路発達(Arteriogenesis)が誘導され、主幹動脈閉塞に際する虚血重症度を著しく軽減する事、造血因子投与がArteriogenesisを促進しうる事を報告してきた。本研究では、造血因子の脳血管での側副血行発達の分子機序と側副血行発達への脳血管内皮機能の関与を解明し、虚血性脳血管障害に対して脳血行動態改善を標的とした造血因子の臨床応用に結びつける事を目的としている。
本年度はマウス総頸動脈閉塞による慢性脳低灌流モデルを用いて、糖尿病モデルマウスである db/dbマウスで側副血行発達促進効果がみられるかどうか検討した。12週令の雄性db/dbマウスとその対照としてdb/+(ヘテロ)マウスを実験に供した。一側総頸動脈閉塞2週間後には db/+(ヘテロ)マウスでは 中大脳動脈と前大脳動脈間の脳軟膜動脈吻合が発達し、中大脳動脈永久閉塞による脳梗塞サイズが有意に縮小した。一方db/dbマウスでは一側総頸動脈閉塞後の脳軟膜動脈吻合発達は観察されず中大脳動脈閉塞に伴う脳梗塞サイズは不変であった。一方ストレプトゾトシンによる糖尿病モデルでは血糖値の上昇を認めたが、一側総頸動脈閉塞による脳軟膜動脈吻合発達は対照マウスと同程度に観察された。以上の結果より、高血糖そのものよりインスリン抵抗性を背景とする病態が遷延することにより脳軟膜でのArteriogenesisが阻害されることが明らかとなった。インスリン抵抗性に起因する脳血管内皮機能不全がArteriogenesisの阻害に関連していることが想定された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

脳血管閉塞に対する防御手段として 脳軟膜動脈吻合を介した側副血行を活用することは有効な治療戦略と考えられている。我々はこれまで脳慢性低潅流モデルで側副血行が発達するモデルを開発し、側副血行発達を造血因子(GM-CSF, G-CSF)が促進することを報告してきた。しかしヒト脳梗塞症例に応用するに当たっては、高齢で生活習慣病を有した個体でも若年マウス ラットと同様に慢性低潅流、造血因子が側副血行発達を促進できるかどうか不明である。昨年は高血圧モデルマウスで、高血圧持続状態では慢性低潅流負荷さらに造血因子を投与しても側副血行が発達しえないことを示した。本年は糖尿病モデルマウスを用いて、インスリン抵抗性を背景とした糖尿病状態では慢性低潅流負荷により側副血行発達を促進できないことを示した。しかし興味深いことに急激な糖尿病状態では側副血行は発達しており、高血糖そのものよりもインスリン抵抗性を背景とした脳血管内皮機能不全状態が側副血行発達阻害要因となっていること考えられた。現在db/dbマウスでの造血因子の側副血行発達への効果を検討中であるが、これまで得られた結果をまとめると脳血管内皮機能が側副血行発達を考えるうえで、重要な要因であることが示唆されている。

今後の研究の推進方策

高血圧モデルマウスおよびdb/dbマウスで、慢性低潅流負荷、および造血因子投与による側副血行発達が阻害されている原因について検討予定である。正常マウスおよびdb/dbマウスで慢性低潅流負荷に際する脳軟膜動脈周辺での集積細胞について検討し、両群間で差がないかどうか検討予定である。Arteriogenesisの詳細なメカニズムは不明であるが、流血中から血管壁に集積する単核球 リンパ球の関与を支持する報告が多い。対照マウスとdb/dbマウスで軟膜動脈周辺への集積細胞の動態に差がないかどうか明らかにする予定である。特にマクロファージのサブタイプM1 M2マクロファージ、CD4リンパ球の関与に注目して検討を進める。特定の細胞の脳軟膜動脈周辺での集積がdb/dbマウスで低下している場合は、同細胞を欠損した遺伝子変異マウスでの検討を追加する予定である。さらに血管内皮機能不全モデルである一酸化窒素合成酵素(eNOS)欠損マウスを現在繁殖中であるので、eNOS欠損マウスでの慢性低潅流負荷による側副血行発達促進効果について検討予定である。また血管内皮機能改善効果が期待されるシロスタゾールを高血圧モデルマウス、db/dbマウスの慢性低潅流モデルに投与して側副血行発達効果を示すかどうかについて検討を進める予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Ischemic Tolerance in the Brain - Endogenous Adaptive Machinery against Ischemic Stress –2012

    • 著者名/発表者名
      Kitagawa K.
    • 雑誌名

      J Neurosci Res

      巻: 20 ページ: 1043-1054

    • DOI

      doi: 10.1002/jnr.23005

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 脳軟膜側副血行発達の機序と臨床への展開2012

    • 著者名/発表者名
      北川一夫
    • 雑誌名

      脳循環代謝

      巻: 23 ページ: 75-83

  • [学会発表] 2型糖尿病モデルマウスにおける脳側副血管の発達についての検討2012

    • 著者名/発表者名
      由上登志郎、八木田佳樹、大山直紀、佐々木勉、望月秀樹、北川一夫
    • 学会等名
      第24回日本脳循環代謝学会総会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20121108-20121109
  • [学会発表] 虚血耐性現象―最近の話題―2012

    • 著者名/発表者名
      北川一夫
    • 学会等名
      第24回日本脳循環代謝学会総会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      20121108-20121109
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi