研究課題/領域番号 |
23390235
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
神経内科学
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
樋口 真人 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, チームリーダー (10373359)
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キーワード | 神経科学 / 生体分子 / 認知症 / 脳疾患研究 / 薬学 |
研究概要 |
本年度は(1)アミロイド病変(タウタンパク、Aβ、α-シヌクレイン)、(2)グリア細胞受容体であるtranslocator protein(TSPO)およびプリン受容体P2Y12・アデノシンA2a、(3)毒性因子安定化酵素であるグルタミン酸環状化酵素(QC)に結合するリガンドの開発に取り組んだ。 (1)アミロイド病変リガンド:Aβ病変のポジトロン断層撮影(PET)リガンドとしては、新規に[^<11>C]AZD2184の評価を行い、これまで広く用いられてきた[^<11>C]PittsburghCompound-Bを上回るコントラストでモデルマウス脳内の病変を検出できることが明らかになった。タウタンパク病変プローブとしては、独自開発プローブ[^<11>C]PBB3の有用性をタウ病変モデルマウスのPETにより確認すると共に、生体内での安定性をさらに高めた化合物の作製を行った。PBB3の誘導体の幾つかは、ヒト死後脳におけるα-シヌクレイン凝集体にも結合することが確認された。次年度以降はこれら新規作成化合物の標識体合成と、モデル動物PETによる評価を実施する予定である。 (2)神経免疫系リガンド:複数のTSPOリガンドを用いて認知症モデル動物のPETを実施し、特性の比較を行ったところ、活性化ミクログリアのTSPOに強く結合するリガンドと、活性化アストロサイトのTSPOに強く結合するリガンドが存在することが判明した。これに基づき、ミクログリアとアストロサイトのそれぞれに対する選択性がより高いリガンド開発を目指して、誘導体化合物カスタムライブラリーを作製した。P2Y12受容体リガンドとしては[^<11>C]clopidogrel、アデノシンA2a受容体リガンドとしては[^<11>C]TMSXをそれぞれ合成し、モデル動物のPETによる評価を開始した。 (3)QCリガンド:新規リガンド[^<11>C]PQ2および[^<11>C]PQ3を作製し、特に[^<11>C]PQ3は生体PETイメージングで脳内QCの定量に有用であることが示された。そこでQC阻害剤のタウ病変モデルマウスへの治療的投与を行い、治療薬による脳内QCの占有率を[^<11>C]PQ3-PETで評価する実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、各種リガンドの開発を進めている。特にTSPOリガンドについては、グリア細胞のタイプに選択的な薬剤の開発が見込めており、これは予想以上の結果である。QCリガンドについても、PETイメージング様のリガンド候補が評価できたのみならず、治療用のQC阻害リガンドが入手できたことから、QCの役割を解明する治療研究が予定以上に早く開始できた。
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今後の研究の推進方策 |
タウタンパクおよびAβ病変のPETリガンドは、今後臨床PETデータなどを参照しながら、さらなる改良の必要性について検討する。α-シヌクレイン病変のリガンドは、病変の蓄積が多量に生じるような適切なモデルマウスは存在しないので、開発の基礎段階では主にヒト死後脳を用いて病変への結合性を評価し、動態特性は動物PETで評価する。TSPOリガンドの開発においては、TSPO欠損マウスや過剰発現マウスを新たに利用して評価の効率化を図る。P2Y12受容体およびアデノシンA2a受容体リガンドは、in silicoシミュレーションによる化合物探索を利用して、候補物質のスクリーニングを実施する。QCリガンドは、誘導体カスタムライブラリー作製を実施して、さらに良好な特性を有する化合物の探索を続行する。
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