研究課題
①アミロイド病変リガンドの開発: 平成26年度はタウ病変をポジトロン断層撮影(PET)で検出するプローブである[11C]PBB3の発展版として、PBB3誘導体を作製し、タウ病変への特異性が高く、より半減期が長い18Fで標識した化合物の開発を行た。その結果、少なくとも2種類の化合物が蛍光染色・オートラジオグラフィー・モデルマウスPETで良好な特性を示した。また、タウ病変モデルマウス系統として、PS19マウスとrTg4510マウスの比較を行ったところ、PETで検出可能なタウ病変が、PS19マウスでは脳幹部に限局していたのに対して、rTg4510マウスでは大脳皮質と海馬の広い範囲で認められた。このことより、タウPETプローブ開発には、rTg4510マウスがより有用と考えられた。②グリア細胞受容体リガンド: 平成26年度はトランスロケータータンパク(TSPO)の新規PETプローブの特性評価を、インビトロ解析を主体として実施した。ヒト脳切片のオートラジオグラフィーにより、アルツハイマー病患者脳のTSPO増加を、従来のプローブよりも鋭敏に検出できる新規プローブを2種類見出した。これらの新規プローブは、老人斑およびタウ病変モデルマウスのTSPO増加も、従来プローブより高いコントラストで捉えられることが、PETにより示された。③グルタミン酸シクラーゼ(QC)リガンド: 平成26年度はQCのPETプローブの特性を評価するため、正常マウスのPETおよびオートラジオグラフィーを実施した。QCの新規プローブは良好な脳移行性を示し、非放射性プローブの過剰投与でPETプローブの結合が阻害されることから、QCへの特異性も支持された。
2: おおむね順調に進展している
タウへの選択性が高い18F標識プローブが複数得られたことより、本研究の中核であるタウPETプローブ開発は順調に進んでいる。プローブ開発に適したモデルマウスも得られたことより、開発はいっそう加速できると見込まれる。TSPOプローブも新規化合物が複数得られ、良好な特性が示されたことから、計画通りに開発が進展している。QCプローブ開発も当初の予定通りに進んでいるが、化合物の安定性を向上させる必要があるなど、課題もいくつか見つかっている。
今後はrTg4510マウス系統を用いて、タウおよびTSPOの新規PETプローブ開発を推進し、有望なプローブはサルでの評価を経て、臨床応用に必要なデータを得る。QCプローブはトリチウム標識体を作製し、病態モデルマウスにおけるプローブ結合部位の詳細な検討を行う。また、化合物の安定性に関してもさらなる検討を実施する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 13件)
International Journal of Geriatric Psychiatry
巻: 30 ページ: 505-513
10.1002/gps.4173
Journal of Nuclear Medicine
巻: 56 ページ: 120-126
10.2967/jnumed.114.146944
International Journal of Neuropsychopharmacology
巻: 18 ページ: pyu030
10.1093/ijnp/pyu030
10.1002/gps.4215
Bioorganic & Medicinal Chemistry
巻: 22 ページ: 4189-4197
10.1016/j.bmc.2014.05.043
巻: 55 ページ: 932-938
10.2967/jnumed.114.139550