研究課題/領域番号 |
23390237
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
永井 義隆 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所・疾病研究第四部, 室長 (60335354)
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キーワード | 神経科学 / 蛋白質 / 脳神経疾患 / 治療 / 蛋白質分解 / 神経変性疾患 / ポリグルタミン病 / 分子デザイン |
研究概要 |
近年、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン(PolyQ)病など多くの神経変性疾患において、いずれも異常蛋白質のミスフォールディング・凝集が共通に神経変性を引き起こすと考えられている。本研究では、PolyQ病の治療法開発へ向けて、異常伸長PolyQ鎖特異的結合ペプチドQBP1を応用して異常伸長PolyQ蛋白質選択的に分解を促進させることを目指して、以下の研究を行った。 1)異常伸長PolyQ蛋白質の分解・除去におけるp62蛋白質の役割の解明:PolyQ病モデルショウジョウバエMJD-Q78を用いて選択的オートファジーに関わると考えられているp62の関与を検討したところ、p62の遺伝子欠損によりMJD-Q78蛋白質の凝集が促進され、複眼変性が有意に増悪することを見出した。以上のことから、p62が異常伸長PolyQ蛋白質のオートファジー分解に重要な働きを持つと考えられた。 2)QBP1-p62キメラ蛋白質による異常伸長PolyQ蛋白質選択的なオートファジー・リソソーム系分解の誘導:異常伸長PolyQ鎖結合ペプチドQBP1(SNWKWWPGIFD)とp62とのキメラ蛋白質QBP1-p62をデザインし、培養細胞実験系で異常伸長PolyQ蛋白質の分解促進効果を検討した結果、正常鎖長のQ19-GFP蛋白質には有意な影響を認めず、異常鎖長のQ81-GFP蛋白質に選択的な分解誘導を認めた。さらにin vivoでのQBP1-p62キメラ蛋白質による異常伸長PolyQ蛋白質の分解促進による治療効果を検証するため、QBP1-p62キメラ蛋白質を発現するトランスジェニックショウジョウバエを作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異常伸長PolyQ蛋白質の分解・除去メカニズムに関しては、本研究によりp62が異常伸長PolyQ蛋白質の分解に関わり、その機能喪失により凝集体形成、病態が増悪することをin vivoモデルにおいて明らかにした。異常伸長PolyQ蛋白質の選択的な分解の誘導に関しては、培養細胞モデルにてQBP1-p62キメラ蛋白質による異常伸長PolyQ蛋白質に選択的な分解誘導効果を明らかにし、さらにin vivoモデルでの検証へ向けて、QBP1-p62キメラ蛋白質を発現するトランスジェニックショウジョウバエの樹立に成功した。以上のことから、全体的に当初の研究計画がおおむね順調、もしくは計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、p62による異常伸長PolyQ蛋白質の分解・除去メカニズムに関しては、ユビキチン・プロテアソーム系よりもオートファジー・リソソーム系分解の寄与を中心に検討する。異常伸長PolyQ蛋白質選択的な分解誘導に関しては、オートファジー・リソソーム系分解の寄与が考えられたため、QBP1とユビキチンリガーゼCHIPとのキメラ蛋白質QBP1-CHIPよりも、p62とのキメラ蛋白質QBP1-p62を中心に解析する。前年度に樹立したQBP1-p62キメラ蛋白質発現ショウジョウバエとPolyQ病モデルショウジョウバエMJD-Q78との交配により、in vivoモデルでのMJD-Q78分解誘導効果、病態抑制効果を明らかにする。
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