研究課題/領域番号 |
23390237
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
永井 義隆 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第四部, 室長 (60335354)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 神経科学 / 蛋白質 / 脳神経疾患 / 治療 / 蛋白質分解 / 神経変性疾患 / ポリグルタミン病 / 分子デザイン |
研究概要 |
近年、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン(PolyQ)病など多くの神経変性疾患において、いずれも異常蛋白質のミスフォールディング・凝集が共通に神経変性を引き起こすと考えられている。本研究では、PolyQ病の治療法開発へ向けて、異常伸長PolyQ鎖特異的結合ペプチドQBP1を応用して異常伸長PolyQ蛋白質選択的に分解を促進させることを目指して、以下の研究を行った。 1)異常伸長PolyQ蛋白質の分解・除去におけるp62蛋白質の役割の解明: PolyQ病モデルショウジョウバエMJD-Q78において、p62の遺伝子欠損がMJD-Q78蛋白質の凝集体形成に与える影響を検討した。その結果、p62の機能喪失により細胞質におけるMJD-Q78蛋白質の凝集が著明に増加した。さらにオートファジー関連遺伝子Atg12の機能喪失においても同様の所見が観察された。一方でp62の遺伝子欠損は可溶性MJD-Q78蛋白質量に対しては影響を与えなかった。以上のことから、p62は細胞質における異常伸長PolyQ蛋白質凝集体の分解に関与していると考えられた。 2)QBP1-p62キメラ蛋白質による異常伸長PolyQ蛋白質選択的なオートファジー・リソソーム系分解の誘導:前年度に作製した異常伸長PolyQ鎖結合ペプチドQBP1とp62とのキメラ蛋白質QBP1-p62を発現するQBP1-p62 FlyとPolyQ Flyとの遺伝学的交配により、QBP1-p62が複眼変性に与える影響を検討した。その結果、PolyQ蛋白質が惹き起す複眼変性がQBP1-p62により有意に抑制された。この結果から、QBP1-p62キメラ蛋白質は異常伸長PolyQ蛋白質のin vivoでの毒性を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
異常伸長PolyQ蛋白質の分解・除去メカニズムに関しては、本研究でp62の機能喪失により細胞質での異常伸長PolyQ蛋白質の凝集体形成が促進されることを示し、さらにオートファジーの機能喪失においても同様の所見が得られることをin vivoモデルにおいて明らかにした。異常伸長PolyQ蛋白質の選択的な分解に関しては、QBP1-p62蛋白質により異常伸長PolyQ蛋白質が惹き起す神経変性が抑制されることをin vivo モデルにおいて明らかにした。以上のことから、全体的に当初の研究計画がおおむね順調、もしくは計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、異常伸長PolyQ蛋白質の分解・除去メカニズムに関しては、p62がオートファジー・リソソーム系を介した異常伸長PolyQ蛋白質の分解に関わることを遺伝学的手法により明らかにする。異常伸長PolyQ蛋白質の選択的な分解に関しては、QBP1-p62蛋白質がin vivo モデルにおいても異常伸長PolyQ蛋白質を選択的に分解することを明らかにする。
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