研究課題
本年度は、肝での代謝変化がどのように多臓器の代謝に影響を与えるかを検討するため、肝での糖代謝およびアミノ酸代謝を亢進させるモデルの作製を試みた。まず、肝での糖代謝を亢進させるモデルとして、グルコキナーゼ、アミノ酸代謝を亢進させるモデルとして、SNAT2アミノ酸トランスポーターの遺伝子を組み込んだ組換えアデノウィルスを作製した。これらを尾静注することにより、肝での代謝を急激に変化させることに成功した。これらのモデルを用い、個体レベルでの糖代謝・脂質代謝・エネルギー代謝を、さらに、各臓器での遺伝子発現の変化を検討したところ、まず、グルコキナーゼ発現モデルでは、エネルギー代謝の抑制が認められ、褐色脂肪組織でのUCP1発現が減少していることを見出した。また、SNAT2発現モデルでは、血中中性脂肪の増加による脂質異常症を呈していた。これらの現象は、肝での代謝変化のみでは説明のできないものであり、新たな臓器間ネットワーク機構の発見を意味するものと考えられた。さらに、血管内皮細胞におけるNF-κBシグナルを抑制したトランスジェニックマウスを作製したところ、老化の抑制と寿命の延長をきたすことを見出した。寿命の延長は、限られた臓器の機能改善だけでは達成できないものであり、全身の臓器がもれなく、機能改善をきたす必要がある。ゆえに、血管ネットワークによる臓器間作用もまた、単に血液を送るだけでなく、個体レベルでの恒常性維持に働いていると考えられ、本研究により、臓器老化や寿命を規定している新たな臓器間ネットワーク機構が発見できたと考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
上記のように、新たな臓器間ネットワーク機構が3経路も発見することができ、当初の計画以上の進展と考えられる。特に血管ネットワークの発見は、寿命や老化に影響を与えることから、意義深いと考えられる。
肝臓での代謝変化が全身のエネルギー代謝や脂質代謝に大きな影響を及ぼしている現象を発見したので、その新規臓器間作用について、その機序の解明を進める。すでに、興味ある結果を得つつあり、この解明も順調に進むものと考えている。
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