研究課題
研究代表者らは、求心路・遠心路双方からなる神経ネットワークが個体としての糖代謝やエネルギー代謝の調節機構に重要な役割を果たしていることを発見した。さらに本研究を進めるうち、肝へのグルコキナーゼ遺伝子導入による糖取り込み亢進により、褐色脂肪組織における熱産生が低下する現象を見出し、過栄養時に効率よくエネルギーを備蓄する体に備わった倹約機構が発見できたものと考えられた。そこで本年度は、この臓器間ネットワークの機序を詳細に解析し、生理的な意義や病態における役割について明らかとすることを目的とした。まず、迷走神経肝臓枝の切断によりこの臓器間連関が生じないことから、肝からの糖代謝亢進シグナルは、求心性迷走神経を介して脳に伝えられていることが示された。さらに、このシグナルが脳内でどのように伝えられているかを検討するため、レーザーマイクロダイセクション法を用いて脳内の核部位における検討を行ったところ、延髄縫線核におけるc-fos遺伝子発現は肝へのグルコキナーゼ遺伝子導入で抑制されることが見いだされた。延髄縫線核は褐色脂肪組織への交感神経起始核が存在するところであり、また、褐色脂肪組織でのカテコラミンターンオーバーが減少していたことから、この臓器間連関は延髄孤束核に入る肝迷走神経求心路と延髄縫線核から出る交感神経遠心路によって形成され、脳がその働きを統御しているものと考えられた。次に、種々の系統のマウスを用いて検討したところ、この肝グルコキナーゼ発現を端緒とする臓器間ネットワークが系統間での太りやすさの違いをも説明できることが明らかとなった。本研究により、個体レベルでの倹約機構が発見され、それが臓器間神経ネットワークを介するものであること、さらに、飽食の現代では、肥満の発症につながっていることが示された。さらに、遺伝的に肥満になりやすいかどうかの決定にも関与している可能性が考えられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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