研究課題/領域番号 |
23390249
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研究機関 | 独立行政法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
深見 真紀 独立行政法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 部長 (40265872)
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研究分担者 |
曽根田 瞬 独立行政法人国立成育医療研究センター, 分子内分泌研究部, 研究員 (10367378)
加藤 芙弥子 国立大学法人浜松医科大学, 医学部, 研究員 (10462798)
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キーワード | 遺伝子 / ホルモン / 先天疾患 / 性分化 / 小児内分泌学 |
研究概要 |
本研究の目的は、生殖機能異常を招く希少疾患患者の解析とそのデータに基づいたin vitro/in vivo解析によって、ヒトの生殖機能を支配する視床下部-下垂体-性腺系のホルモン制御機構を明らかにすることである。本年度は、下記の成果が得られた。 1.POR発現調節機構の解明:POR遺伝子翻訳領域に変異を有さない患者3例のアレイCGH解析を行い、全例で微細欠失を同定した。3例の共通欠失のバイオインフォマティックス解析とレポーターアッセイによって、非翻訳エクソン1直前の3つのSPI結合配列がPORの広範性発現に必須であることを見出した。 2.ゴナドトロピン欠損症患者の病態の解明:TACR3異常症女性患者の臨床症状と細胞実験から、TACR3が視床下部におけるGNRH分泌制御に関与することを明確とした。また、FGFGR1遺伝子異常が、従来知られているゴナドトロピン単独欠損症のみならず、複合型下垂体機能低下症の病態を招くことを明確とした。 3.エストロゲンが男性ホルモン産生低下を招く機序の解明:CYP19A1遺伝子過剰発現に起因するアロマターゼ過剰症(AEXS)患者の臨床解析から、エストロゲンの視床下部-下垂体-性腺系に対するネガティブフィードバックの主体が、下垂体レベルでのFSHの選択的抑制であることを見出した。さらに、比較的少量の血中エストロゲン量の増加によってFSHが抑制されること、男性の妊孕性にFSH低下の及ぼす効果がわずかであることを明確とした。また、AEXS患者の臨床像の重症度が、当該患者のキメラ遺伝子形成に関与するプロモーターの活性に依存することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
11月末の追加採択であったため、研究期間が短期間であった。しかし、おおむね計画通りの進展がみられた。とくにゴナドトロピン分泌制御に関しては、FGFR1異常症の新たな表現型の解明など、当初の計画以上の成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果に基づき、24年度はとくにゴナドトロピン分泌制御に関する遺伝子相互作用の解明とAEXSの病態の解明を中心として研究を展開する。 1.ゴナドトロピン分泌制御に関する遺伝子相互作用の解明:ゴナドトロピン分泌異常を呈する患者を対象として既知遺伝子および候補遺伝子の網羅的変異解析を行う。本研究では、次世代シークエンサーを用いることにより、効率的変異スクリーニングを行う。また、変異遺伝子の機能を細胞実験等で解明する。これにより、ゴナドトロピン分泌異常症のようなoligogenic disorderにおける個々の遺伝子異常の意義を明確とし、ゴナドトロピン分泌制御に関与する新規遺伝子ネットワークを解明する。 2.AEXSの病態の解明:新規に集積された重房腫大患者のCYP19A1解析を行い、遺伝子過剰発現を招く新規ゲノム異常を解明する。また、AEXS患者の内分泌学的所見および治療への反応性を検討し、疾患重症度決定因子を解明する。最終的に、エストロゲン過剰が生体とくに男性生殖機構に与える効果を明確とする。
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