研究課題/領域番号 |
23390252
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
本田 浩章 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40245064)
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研究分担者 |
上田 健 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (60585149)
稲葉 俊哉 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (60281292)
本田 善一郎 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70238814)
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キーワード | 白血病 / ヒストン脱メチル化酵素 / Fbx110 / トランスジェニックマウス |
研究概要 |
我々は、ヒストン脱メチル化酵素であるFbxl10の造血腫瘍発症機構への関与を解析する目的で、造血幹細胞でFbxl10を高発現するトランスジェニックマウス、および造血細胞を含む全身の細胞でFbxl10を欠失したノックアウトマウスを作製した。長期観察の結果、トランスジェニックマウスに白血病発症を認め、Fbxl10は造血細胞ではがん遺伝子として機能することを見いだした。Fbxl10は、ヒストンH3K36に対する脱メチル化酵素として作用することが報告されている。Fbxl10高発現および欠失によるヒストンH3K36のメチル化の変化を検討する目的で、我々はトランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスの造血幹~前駆細胞を単離し、抗メチル化H3K36抗体を用いてウエスタンブロットを行った。その結果、トランスジェニックマウスの造血幹細胞ではヒストンH3K36のメチル化が低下しており、Fbxl10高発現はヒストンH3K36の低メチル化状態を介して白血病発症に関与していると考えられた。また、Fbxl10トランスジェニックマウスに発症する白血病は、造血細胞にその原因があることを確認する目的で、我々はFbxl10トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスから造血幹細胞を単離し、放射線照射した同系統のマウスに骨髄移植を施行した。1回目の移植では有意な差は認められなかったが、2回目の移植では、Fbxl10トランスジェニックマウス由来の骨髄細胞では有意なキメリズムの上昇を、Fbxl10ノックアウトマウス由来の骨髄細胞では有意なキメリズムの低下を認めた。これらの結果は、造血幹細胞におけるFbxl10の高発現は造血系列に増殖能を寄与することを示すと共に、FBxl10トランスジェニックマウスに発症した白血病は造血細胞自体の増殖能の亢進によることを示している。今後、これらの表現型の基盤となる分子機構について解析を行って行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(平成24年度)当初に提唱した研究実施計画の主な3つの柱である、1)Fbxl10過剰発現および欠失による造血幹細胞におけるヒストンメチル化の変化の検討、2)Fbxl10Tgにおける白血病発症が細胞自律的(cell-autonomous)であることの確認、3)Fbxl10過剰発現および欠失による造血幹細胞における遺伝子発現変化の検討、のうち、前2者についてはほぼ達成されたと考えられる。3)については来年度継続して実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の解析結果により、Fbxl10トランスジェニックマウスに発症する白血病について、Fbxl10が造血幹細胞に過剰発現することによりヒストンH3K36のメチル化が低下し、その結果造血細胞が増殖能を獲得することが原因であることが示された。今後は、ヒストンH3K36の低メチル化状態がどの様な遺伝子の脱制御を介して白血病発症を誘発するかについて、その基底にある分子機構を明らかにして行く予定である。
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