研究課題/領域番号 |
23390254
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
血液内科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮本 敏浩 九州大学, 大学病院, 講師 (70343324)
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研究分担者 |
赤司 浩一 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80380385)
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キーワード | 白血病 / 幹細胞 / TIM-3 / 標的治療 |
研究概要 |
我々は正常造血幹細胞には発現を認めず、急性骨髄性白血病(AML)の幹細胞に特異的に高発現する分子Tim-3を同定した。Tim-3は細胞表面に発現しているため、フローサイトメトリーにより解析可能で、AML-M3を除くすべてのAML幹細胞においてTim-3の高発現を認め、理想的なAML標的分子としての抗体治療候補と考えた。そこで、Tim-3抗体を作成するために、balb/cマウスにヒトTim-3タンパクを免疫し、抗ヒトTi鉢3マウスIgG2a抗体(ATIK2a)を純化・精製した。ATIK2aの殺細胞効果を検証するため、細胞株EoL-1とL929にTim-3を遺伝子導入し、in vitroにおいてウサギ血清存在下にATIK2aを添加した。Tim-3陽性細胞株はATIK2a用量依存性に死滅し、ATIK2aがCDC活性を有することが明らかとなった。また、ヒト単核球存在下においてもATIK2aはTim-3陽性細胞株を溶解させ、ATIK2aがADCC活性を有することが示された。すなわち、ATIK2aはTim-3陽性白血病細胞に対して、CDCおよびADCC活性を通して、殺白血病胞効果を有することが示された。次に、免疫不全マウスにヒト白血病サンプルを移植し、ヒト白血病マウスを作成し、ATIK2aの抗白血病効果を検証することを目的とする。そのために、事前にヒト正常造血に対するATIK2aの効果を検討した。ヒト臍帯血CD34陽性幹細胞を純化して免疫不全マウスに移植後、ATIK2aを腹腔内投与した。コントロールと比較してATIK2a投与群では、ヒト造血幹細胞、骨髄球系、Bリンパ球系分画に差を認めず、ATIK2aはマウス内で再構築されるヒト正常造血に影響を与えないことを確認した。AMLサンプルをマウスに移植して,ヒトAMLが再構築されたマウスにおいてATIK2aによる分子標的治療の開発を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tim-3に対する抗ヒトTim-3マウス抗体の作成に成功し、まずはin vitroでのT-m3陽性細胞株に対する抗白血病効果を確認できた。マウスin vivoでのATIK2aによる抗白血病効果を検証するために、事前にマウス内で再現させたヒト正常造血に対するATIK2aの効果を検討したが、ATIK2aは正常造血には影響を及ぼさないことを示した。これにより、ヒト白血病マウスモデルでのTim-3による抗白血病効果を検証することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はヒト白血病サンプルを用いてヒト白血病モデルマウスを作成し、マウスin vivoでのATIK2aによる抗白血病効果を検証する予定である。ATIK2aが白血病幹細胞を死滅させ得るのか、連続移植の系を用いて検討する予定である。また、Tim-3の白血病発症に関与する役割についても併せて解析を進めたい。これにより、Tim-3特異的な分子標的治療の開発を目指す。
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