研究課題/領域番号 |
23390257
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北浦 次郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30282651)
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研究分担者 |
北村 俊雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20282527)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アレルギー / 炎症 / 免疫 / ペア型レセプター |
研究概要 |
本研究の目的はLMIR3・4・5・6・7ノックアウトマウスの解析と同時に、LMIRが何を認識しているかを明らかにしてLMIRの生体内における役割を明らかにすることである。当該年度の研究における大きな成果は、LMIR3のリガンドとして脂質のセラミドを同定したことである。LMIR3の細胞外領域を利用したプローブやレポーター細胞を利用して、さまざまな脂質をスクリーニングした結果、セラミドをリガンド候補分子として同定した。実際に、LMIR3とセラミドの結合がマスト細胞の高親和性IgEレセプターのシグナルをin vitroで抑制することを示した。さらに、in vivoのPCA反応において、耳介におけるセラミド抗体の前処置は野生型マウスのPCA反応を亢進させる一方、セラミドリポゾームの前処置は野生型マウスのPCA反応を減弱させることを示した。また、皮膚のマスト細胞が局在する真皮には細胞外セラミドが存在すること、しばしばそのセラミドとマスト細胞が接触していることを、組織染色により示した。以上の結果から、マスト細胞のLMIR3はセラミドを認識してマスト細胞の過剰な活性化と付随するアレルギー反応を抑えることを証明した。また、同様のリガンドスクリーニング法により、他のLMIRの一部も特定の脂質を認識するレセプターである可能性が示唆されている。ノックアウトマウスの解析では、LMIR4欠損によりマウスが敗血症に対して抵抗性を示すこと、LMIR5やLMIR7欠損によりいくつかの炎症モデルにおける症状が軽減すること、が証明された。本年度の研究成果はLMIRが脂質を認識して免疫細胞の生体内機能を制御する可能性を示唆しており、LMIRの生体内における役割の全貌を明らかにする上で大きな前進となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に改良したリガンドスクリーニング法により、脂質セラミドをLMIR3のリガンドとして同定した。また、LMIRがアレルギーを抑える重要なレセプターであることも明らかにした。LMIRのリガンドを同定するという最難関の目標を一部クリアできた点が現時点で最も重要な成果であり、評価できる部分でもある。また、これらの結果はLMIRファミリーの機能を解明する上でのブレークスルーとなりつつある。他のLMIRの解析においても、同様の手法が使える点が今後の研究に光明を与えている。これらを鑑みて、おおむね順調に研究が進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きLMIRリガンドの同定を試み、すべてのLMIRリガンドを明らかにすることが最終目標となる。LMIR3のリガンドとしてセラミドを同定した手法を利用して、他のLMIRリガンドについても脂質をスクリーニングすることで研究を推進したい。 これまでの結果を踏まえて、ノックアウトマウスの解析としていくつかの炎症モデル(アレルギー、敗血症、腸炎)を中心とし、各LMIRがどのような病態に関与するかを明確にする。さらに、各LMIRと同定されたリガンドの結合の有無により病態が説明できるかを検討して、LMIRの機能の全貌明らかにしたい。
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